第25話

文化祭が終わり、日常が戻ってきた。普段通りの授業や、何気ない友達との会話が、以前より少しだけ輝いて見える。文化祭でのステージの経験が、美咲に自信を与え、彼女の日々を豊かにしてくれているのを感じた。


ある日の放課後、美咲は音楽室に足を運んだ。文化祭が終わっても、音楽への情熱は薄れるどころか、ますます強くなっていた。音楽室には誰もおらず、彼女はピアノの前に座ってそっと鍵盤に手を置いた。いつもとは違う、少し寂しさを感じる静かな空間だったが、心地よくもあった。


ふと、スマートフォンを取り出してメッセージアプリを開くと、悠斗からのメッセージが届いていた。


「文化祭、無事に終わったんだって?お疲れ様!俺もこっちのステージで演奏して、すごく楽しかったよ」


美咲は微笑みながら返信を打った。


「ありがとう!私も楽しかったし、すごくいい経験になったよ。悠斗の方も成功したみたいでよかったね!」


二人は離れていても、お互いの頑張りを知り、支え合っていることがとても嬉しかった。文化祭というひとつの大きな目標を達成したことで、美咲は次に向けての新たな挑戦を考えるようになった。


その日の帰り道、美咲は自転車を漕ぎながら、ふと未来のことを考えた。「私、この先も音楽を続けたいな」と自分に言い聞かせるようにつぶやいた。その思いが胸の中で確信に変わりつつあるのを感じた。


帰宅すると、母がキッチンで夕食を準備していた。「おかえり、美咲。今日はどうだった?」と尋ねられ、美咲は文化祭や悠斗との話をしながら、最近感じている音楽への情熱についても話した。


母は彼女の話を静かに聞きながら、「美咲がそんな風に思えるようになって、お母さんも嬉しいわ。これからも自分の好きなことを続けて、どんどん挑戦してみるといいわね」と励ましてくれた。


美咲はその言葉に元気づけられ、次の目標を心に決めた。「私、これからも音楽を頑張る。そして、いつか悠斗と一緒にステージに立てるくらいの実力をつけたい」


彼女の瞳には、未来への希望が輝いていた。


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