第21話

悠斗が引っ越してから数週間が経った。美咲の生活は、少しずつ新しい日常へと戻りつつあったが、ふとした瞬間に彼のことを思い出してしまう。学校の帰り道や放課後の音楽室、彼と過ごした場所や出来事が心に蘇るたびに、美咲の胸は切なく締めつけられた。


しかし、美咲は悠斗の言葉を思い出していた。「どんなことがあっても、俺は美咲のことを忘れないから」という彼の力強い言葉が、美咲を支え、日々の励みとなっていた。悠斗が新しい街で頑張っていることを信じ、自分も前向きに過ごそうと心に決めていた。


ある日、美咲の元に悠斗からメッセージが届いた。心が躍り、すぐにスマートフォンを手に取り、彼からの言葉を読んだ。


「元気にしてる?こっちは少しずつ慣れてきたよ。新しい学校でも音楽部に入って、なんとか頑張ってる。美咲も元気でいてね!」


そのメッセージを読んで、美咲の胸は温かくなった。悠斗も新しい場所で奮闘していることを知り、自分も負けていられないと気持ちを新たにした。すぐに返信を打った。


「悠斗、メッセージありがとう!こっちも元気だよ。私も音楽、頑張ってる。お互いに負けずに頑張ろうね!」


こうして、二人は離れていても励まし合いながら、日々を過ごしていた。美咲は、悠斗とのやりとりがある度に心が晴れやかになり、日常に少しずつ充実感を感じ始めていた。


放課後の音楽室では、仲間たちと一緒に練習を続けていた。悠斗がいなくなったことで寂しさはあったが、その分、彼に負けないように自分も成長したいという強い思いが湧き上がってきた。「悠斗がいたら、ここでどう弾くだろう?」と考えながら練習を重ね、彼との思い出を心に抱きつつ、音楽に没頭する日々が続いた。


さらに、学校のイベントで新たなバンドメンバーとステージに立つことが決まり、美咲は新しい仲間と一緒に曲作りや演奏に励んでいた。悠斗とのバンド活動を通じて得た経験が、今の自分に大きな影響を与えていることを感じていた。


ある日の放課後、美咲は音楽室の窓辺で夕陽を見つめていた。彼女の心には、悠斗との思い出とともに、新しい仲間と築いていく未来が描かれ始めていた。「私は一人じゃない」と感じ、美咲は強く前を向く決意をした。


遠く離れていても、悠斗との絆が彼女を支えている。そして、彼に誇れる自分になれるよう、美咲はこれからも音楽と向き合い、成長し続けることを心に誓った。


美咲は心の中でつぶやいた。「悠斗、ありがとう。私はあなたのおかげで強くなれたよ。これからも、自分の道を歩んでいくよ。」


新しい日常の中で、美咲は自分のペースで成長し、そして彼との思い出を胸に抱きながら、未来へと進んでいく。


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