第12話

悠斗との関係が一層深まった美咲は、彼と共有した秘密が心に温かく広がるのを感じていた。次の練習日が近づくにつれ、美咲の期待と少しの緊張が交錯していた。「本当に悠斗に見せても大丈夫かな?」と不安が頭をもたげるが、彼の励ましの言葉を思い出すと、勇気が湧いてきた。


練習の日、放課後、美咲はドラムセットのある音楽室に向かった。友達と一緒にやるバンドの練習はいつも楽しいが、今日は特別な気持ちがあった。悠斗が見に来るという期待感が彼女の心を踊らせていた。


友達と合流し、練習が始まった。美咲はドラムを叩くと、リズムが体に流れ込み、いつものように楽しさが心を満たした。しかし、悠斗が来ることを考えると、少しだけ気が引き締まった。彼に見せるために、より良い演奏をしようと思った。


練習が進む中、仲間たちと意気投合しながらも、心の隅で悠斗のことが気になって仕方がなかった。「悠斗、どのくらいで来るのかな?」と何度も時計を確認する。彼が来るまでに上手くなっていたいという思いが、美咲を焦らせていた。


やがて、練習が終わり、仲間たちが「お疲れ様!」と声を掛けてくる。美咲は達成感で満ち溢れていたが、悠斗がまだ来ていないことに少しだけ残念な気持ちも抱えていた。「悠斗、遅れてるのかな」と心配になる。


その時、ドアが開いて、悠斗が顔を覗かせた。「ごめん、少し遅れちゃった!」と彼が入ってくると、美咲の心は一気に高まった。悠斗は少し息を切らしながらも、明るい笑顔を浮かべていた。


「大丈夫、私もさっき終わったところ!」美咲は元気よく返した。「それじゃあ、少しだけ見ててくれる?」


悠斗は頷き、音楽室の隅に座った。美咲は仲間たちと目を合わせ、心の中で「見ててね、悠斗」と自分に言い聞かせる。彼の存在が、何だか特別な力を与えてくれるような気がした。


再びドラムを叩き始めると、緊張感が少しずつ解けていった。仲間たちとの息もぴったり合い、楽しい演奏が繰り広げられる。美咲は、自分が悠斗に見せたい演奏をしていることを思い出し、自然と笑顔が溢れた。


演奏が終わった瞬間、仲間たちが拍手を送る。「美咲、上手だったよ!」と友達が声をかけてくれると、美咲は嬉しさでいっぱいになった。その時、悠斗も立ち上がって拍手をしてくれた。「本当にすごい演奏だったよ、美咲!感動した!」と彼が言ってくれると、美咲の心は一瞬で高揚した。


「ありがとう、悠斗!あなたが来てくれたから、頑張れたんだ」と言い返すと、彼の顔が明るく輝いた。「今度は、俺も一緒にやろうよ。美咲とバンドを組むのも面白そうだ」と提案してくれた。


その言葉に、美咲の心が躍った。「本当に?悠斗もバンドに入ってくれるの?」と驚きながら尋ねると、悠斗は「もちろん、やってみたい!」と笑顔で答えた。


その瞬間、美咲は彼との新しい夢が広がっていくのを感じた。悠斗との関係が音楽を通じてさらに深まっていくことを思うと、未来が明るく見えた。「これからも、たくさんの思い出を一緒に作っていこう」と心に決めた。


帰り道、二人は手を繋いで歩きながら、これからのバンド活動について話し合った。美咲は、悠斗との関係がますます特別なものになっていく予感がした。「悠斗と一緒にいることが、こんなにも楽しいなんて」と心の中でつぶやいた。


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