第9話

美咲は、悠斗との関係を進めるために自分の気持ちを整理し続けた。彼に対する思いが強い一方で、友達としての距離を壊したくないという思いがいつも頭を悩ませていた。しかし、彼女はある決意を固めることにした。「少しずつでも、自分の気持ちを伝えていこう」と。


放課後、美咲は思い切って悠斗に声をかけた。「ねえ、悠斗、今度一緒に遊びに行かない?」と提案した。悠斗は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに笑顔で「いいよ、どこに行こうか?」と返してくれた。


「映画とか、行ってみたいな」と美咲が言うと、悠斗は「それはいいアイデアだね!今度の土曜日に行こう!」と嬉しそうに答えた。彼の反応に、美咲の心が弾んだ。これが一歩を踏み出すきっかけになるかもしれないと期待した。


土曜日がやってきた。美咲は朝からドキドキしながら服を選び、いつもよりも少しだけおしゃれをして出かける準備をした。「今日は特別な日なんだから、気合を入れなきゃ」と心の中で自分に言い聞かせた。


映画館に着くと、悠斗が待っていた。彼はカジュアルな服装で、見た目もいつもと変わらず爽やかだった。「美咲、今日は楽しもうね!」と明るい声で言ってくれた。その瞬間、美咲の心の中の不安が少しだけ和らいだ。


映画が始まると、二人はスクリーンに集中した。ストーリーに引き込まれる中、美咲は悠斗の隣にいることが幸せでたまらなかった。彼の存在が心強く、映画の中の出来事よりも、彼との時間が一番大切だと感じていた。


映画が終わると、二人は感想を言い合いながら帰り道を歩いた。「あのシーン、すごく良かったね!」と悠斗が言うと、美咲は嬉しそうに頷いた。「うん、特に最後のところが印象的だった!」と返すと、悠斗は「美咲がそう思ってくれて嬉しいよ」と微笑んだ。


その後、近くのカフェに寄ってスイーツを楽しむことにした。甘いケーキと美味しいドリンクを前に、自然と会話も弾む。「こういう時間、すごくいいね」と悠斗が言うと、美咲は心の中で「もっとこういう時間を増やしたい」と思った。


美咲は心の中で彼への思いを強めながらも、やはり勇気が出ずにいた。どのタイミングで彼の気持ちを確認すればいいのか、どうやって自分の想いを伝えればいいのか、頭の中は様々な考えでいっぱいになっていた。


帰り道、ふとした瞬間に美咲は自分の心に問いかけた。「悠斗と私は、本当に友達なのか?それとも、もっと特別な関係になれるのか?」彼女は自分の気持ちを確かめたくなり、思い切って「悠斗、私たちの関係について、どう思ってる?」と尋ねてみることにした。


悠斗は驚いた表情を浮かべたが、すぐに真剣な眼差しで「美咲、俺も考えてたよ。お前のことはすごく大切に思ってるし、友達以上の関係になれたらいいなって」と答えた。


その瞬間、美咲の心は嬉しさでいっぱいになり、思わず涙がこぼれそうになった。彼の言葉が彼女の心に深く響き、ついに彼との関係が新たな一歩を踏み出した瞬間だった。


美咲は「私も、悠斗が大好きだよ」と素直な気持ちを伝えた。二人の間に流れる優しい空気が、これからの関係をより深いものへと変えていく予感がした。春の暖かな日差しの中、彼女たちの心に確かな一歩が刻まれた。


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