第8話

文化祭が終わり、美咲の心には満ち足りた気持ちが残っていた。しかし、悠斗との関係が進展しないことへの不安も消えることはなく、心の奥で静かに渦を巻いていた。


数日後、学校では新しい授業が始まり、クラスも少しずつ落ち着きを取り戻していた。美咲は友達とおしゃべりしながら過ごしていたが、悠斗の姿を探す自分がいることに気づいた。彼がどこにいるのか、何をしているのかが気になって仕方がなかった。


放課後、図書室に行くと、悠斗はいつものように本を読んでいた。美咲は彼に声をかけると、悠斗は顔を上げてにっこりと笑った。「美咲、来たんだね!最近、図書室にあまり来てなかったから、心配してたよ」と彼は言った。


「ごめん、ちょっと忙しかったから…でも、また一緒に本を読もうと思って」と美咲は微笑んだが、内心では彼の関心が自分にどれほど向いているのか疑問に思っていた。


その日、二人は本を選び、静かな場所で読み始めた。悠斗が選んだ本は美咲の好みではなかったが、彼が楽しそうに読んでいる姿を見ているのが好きだった。美咲は彼の笑顔を見て、自分の気持ちを整理しようと努めた。


しかし、悠斗が他の友達と一緒にいる姿を見ると、美咲は心の中に不安が湧いてきた。彼は本当に自分に興味を持っているのだろうか?友達としての距離を縮めることができているのか、それとも彼の心の中には別の誰かがいるのではないかと、考えるたびに気持ちが沈んでいくのだった。


ある日、美咲は友達の由紀と一緒にランチをとっていると、彼女が「最近、悠斗とどうなの?進展あった?」と尋ねてきた。その言葉にドキリとし、美咲は少し戸惑った。「うん、普通に仲良くしてるけど、特に変わりはないかな…」と曖昧に答えた。


由紀は心配そうな表情を浮かべながら、「美咲、無理してない?悠斗のこと、本当に好きなんでしょ?」と問いかけた。その言葉に、美咲は自分の本当の気持ちを再確認させられた。そう、悠斗のことが好きで、もっと彼と近づきたいと思っている。しかし、どうすればいいのか分からず、ただ不安に思うばかりだった。


その夜、美咲は自分の気持ちを整理しようと日記をつけ始めた。「悠斗に対する気持ちが大きくなっているのに、彼とどのように関係を進めていけばいいのか分からない…このままでは友達としての関係が壊れてしまうのではないか」と心の中のもやもやを書き出した。


美咲は、悠斗との友情を壊したくないという思いと、彼に対する特別な感情の間で揺れていた。彼女の心の中には、春の光が差し込むような明るい期待と、不安の影が交錯していた。これからどう進んでいくのか、彼との関係をどうするべきなのか、答えが見つからないまま、美咲は眠りについた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る