第7話

美咲は悠斗との関係を大切にしながら、彼との友情を深める日々を楽しんでいた。しかし、春の心地よい季節が続く中、彼女の心には不安がいつも付きまとっていた。悠斗の言葉に従い、焦らずに楽しもうと思ったものの、やはり彼への想いは日に日に強くなっていくばかりだった。


そんなある日、学校の文化祭の準備が始まった。美咲たちのクラスは、劇を上演することになった。悠斗もそのメンバーに選ばれ、美咲は嬉しさを隠せなかった。「これでまた、一緒に過ごす時間が増えるね!」と彼に言った。


文化祭の準備が進む中、悠斗は忙しそうに動き回り、美咲に話しかける時間が少なくなっていった。クラスのリーダーとしての責任感からか、彼は仲間たちを引っ張る姿がとても頼もしく、美咲は彼を見守ることができた。


しかし、そんな悠斗の様子を見ているうちに、美咲の中である思いが芽生え始めた。「もしかしたら、悠斗は私のことを特別には思っていないのかもしれない」という不安が、心の中でぐるぐると回り続けた。


文化祭前日、クラスの練習が終わった後、美咲は思い切って悠斗に話しかけた。「ねえ、悠斗。最近、あまり話せてないね。忙しいのはわかるけど…」と口を開くと、悠斗は少し驚いた表情を見せた。


「ごめん、美咲。文化祭のことで頭がいっぱいで…でも、お前のこともちゃんと考えてるよ」と悠斗が言った。その言葉に少しだけ安心したが、美咲の心の中にはまだ不安が残っていた。


「私も悠斗と一緒にやりたいことがたくさんあるの。だから、時間ができたらまた一緒に過ごそうね」と美咲は心の中で自分に言い聞かせた。


文化祭当日、美咲は緊張と期待の入り混じった気持ちで会場に向かった。クラスの劇は成功するだろうか、そして悠斗ともっと近づけるチャンスがあるのか、期待に胸が高鳴った。


劇が始まると、悠斗は舞台での演技を楽しんでいる様子だった。美咲は彼の姿を見つめ、彼が輝いているのを感じた。しかし、彼の姿を見ているうちに、心の中にさまざまな感情が渦巻いていくのを感じた。


劇が無事に終わり、クラスメートたちが拍手で盛り上がる中、美咲は悠斗と目を合わせた。彼の笑顔が眩しく、思わず心がときめいた。


その瞬間、美咲は心の中の不安を振り払うように決意した。「たとえ彼が特別な気持ちを持っていなくても、私は彼と友達でいることが大切だ」と思ったのだ。


文化祭の成功を喜び合いながら、美咲は悠斗に声をかけた。「お疲れ様!すごく良かったよ、悠斗!」彼は照れくさそうに笑い、「ありがとう、美咲も頑張ってたね」と返した。


その夜、美咲は悠斗との友情を改めて大切にしようと心に決めた。彼との関係がどう進展するかは分からないが、少なくとも今は彼と一緒にいる時間を楽しむことが一番だと感じたのだった。春の風が彼女の心を少しずつ軽やかにしていくのを実感していた。


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