第5話

数日後、春の心地よい風が吹く中、美咲は放課後の図書室で悠斗と会うのを楽しみにしていた。彼との約束が心の支えとなり、毎日が色鮮やかに感じられた。


その日、美咲はいつもより少し早めに学校に着き、図書室で本を探していた。悠斗が来る前に、自分の気持ちを整理しておきたかったからだ。「彼ともっと仲良くなりたい、でもどうやって伝えればいいのか…」美咲は自分の心の中で葛藤していた。


悠斗が到着すると、彼の明るい声が美咲の耳に届いた。「おはよう、美咲!今日は何を読もうか?」その笑顔を見ると、美咲は心が温かくなり、すぐに彼の近くに寄った。


「今日はこの本を借りたいと思ってるんだ」と、美咲は自分が選んだ本を差し出した。悠斗はその本を見て、「それ、面白そうだね!一緒に読んでみない?」と提案してくれた。美咲は内心ドキドキしながら、「いいね、一緒に読もう!」と答えた。


二人は図書室の隅の静かな場所に座り、本を開いた。悠斗が朗読を始めると、美咲はその声に引き込まれていった。彼の優しい声と共に物語の世界に浸る中、美咲は「この時間が永遠に続けばいいのに」と思った。


読み進めるうちに、悠斗が美咲の方をちらりと見て微笑んだ。その瞬間、美咲の心臓は高鳴り、思わず目をそらした。彼の笑顔は、彼女の心に甘酸っぱい感情を引き起こす。二人の間に流れる空気が、少しずつ特別なものに変わっていくのを感じた。


その後、読書が終わった後、悠斗が「この本の結末、どう思う?」と感想を聞いてきた。美咲は考え込みながら、「主人公が成長する姿が素敵だったと思う。私も、何か新しいことに挑戦したいな」と素直に言った。


悠斗は真剣な表情で美咲の言葉を受け止め、「美咲は十分素敵だよ。もっと自信を持っていいと思う」と優しく言った。その言葉が美咲の心に響き、彼に対する感情がますます強くなっていくのを感じた。


その日は一緒に帰ることになり、二人は学校の帰り道を並んで歩いた。悠斗の隣にいることがとても心地よく、自然と笑顔がこぼれた。話題は好きなことや趣味に広がり、楽しい時間が過ぎていく。


しかし、帰り道の途中、美咲は思い切って言葉をかけた。「悠斗、私…君のことが好きかもしれない」と心の中の気持ちを吐露した。言った瞬間、心臓がドキドキし、言葉を言ったことに驚いた。


悠斗は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔に戻り、「俺も、美咲といるのが楽しいと思ってるよ」と返してくれた。その言葉に美咲は心が躍り、嬉しさが広がっていった。


この日、美咲は悠斗との関係が新たな一歩を踏み出したことを実感した。恋の兆しが芽生え、春の光の中で彼女の心も輝き始めていた。彼との未来がどのように展開していくのか、楽しみで仕方なかった。


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