西暦684年11月 上高末 騒動本格化
刀良と阿止理が、
「阿止理、吉備津の方はどうだ?」
「色々、温羅殿の祟りが出ています。」
「例えば?」
「加夜氏の所では、吉備津彦の軍勢に接待をして、キノコ類を食べさせたそうです。非常に気に入って、よせばよいのに自分たちでキノコを採って食べたそうです。数人が死んだらしいです」
「素人のキノコ狩りか」
「三野氏も、フグを食べさせたとか」
「都のお偉い人たちはフグを知らないか」
「はい。全て、温羅殿の呪い、丑寅みさきの祟りと噂になっています」
「なんか、食べ物ばかりだな」
「いえいえ、吉備津彦殿の為の畑が不作になったり、がけ崩れが起こったり、そう言えばこの前の嵐も、丑寅みさきの祟りになっていますね」
「猪手たちはどうしている?」
「裏で頑張っています。三野氏のフグも、猪手殿の入れ知恵です。正確には入鹿の発案だそうです」
「実際の戦いはほとんどない?」
「一部に手荒い戦いをするものもいたらしいですが、まともに戦っても厳しい。聞いた話では、酒を飲ませてから戦って海に沈めたこともあるらしいです。しかし、面倒なので今の形になっていったらしいです」
「血気盛んな連中がそんなに簡単に変わるのか?」
「猪手殿も驚いていましたが、皆、楽しんでいるそうです」
「調子に乗らなければよいが……」
「詳しくは教えてもらえなかったのですが、組織作りを始める様です」
「そうなると、今度は吉備津彦殿その人だな」
「どうゆうことです?」
「朝廷は無理でも、できるだけ災いの元を絶つということだ」
「つまり、吉備津彦殿を……」
「それでことが済めば良いが、吉備津彦殿がいなくなれば、都から別の人物が来る。だから吉備津彦殿にはこの吉備で頑張ってもらわねばならない」
「戦う相手の大将をこちらに引き込む?」
「できればな」
「どうやって?」
刀良は笑うながら答えた。
「待っているだけでよい」
「待っているだけ?」
「そうだ。吉備津彦は怖いのは、朝廷だ。そして朝廷が怖いのは、民が騒ぐことだ。そしてその民の騒ぎは猪手たちが作っている」
「は~ 納得できるような出来ないような。しかし待っているだけでは……」
「吉備津彦への働きかけは、別の人がいる。全てが関係ない様に見えている。それが大切なのだ。だからこちらは待っているだけでよい」
「よくわかないですが、刀良様がそういわれるのであれば、そうなのでしょうね」
刀良が笑いながら、指摘した。
「様でなく、殿な」
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