承 戦いと温羅の死

学習会2回目 西暦2025年6月2日

さて、二回目の講義は、吉備津彦と温羅の戦いの話です。

まずは、伝説ですね。


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温羅は変幻自在で、戦いで傷ついても温泉で癒す為、吉備津彦も攻めあぐねた。

しかも、後々吉備津神社になる場所から吉備津彦が打った矢は、温羅の居城である鬼ノ城から温羅が打った矢と空中でぶつかり落ちてしまう。

吉備津彦は二つの矢をつがえて同時に打つと、一本は温羅の矢に当たって落ちたが、もう一本の矢は温羅の左目に刺さり、血が流れ出した。

これで、温羅は雉になって逃げ出し、吉備津彦は鷹になって追った。

そこで、温羅は鯉になって川に隠れたが、吉備津彦は鵜になって温羅を捉えた。

捕らえられた温羅は、『吉備冠者』の名を吉備津彦に献上した。

吉備津彦は温羅の首をね、串刺しにてさらした。

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一回目以上に、SF感がでています。

まずは、『変幻自在』

なにが変幻自在か、戦い方が変幻自在か、姿形が変幻自在か分かりませんが、完全に神話、SF、ファンタジーの世界ですね。

温羅は、非常に強い相手であることを印象付けようとしているのと、後々の文章『雉、鯉等』の伏線ですね。


続いて『矢』についてです。

『吉備津神社と鬼ノ城から打った矢が空中でぶつかる』

矢を打ち合った吉備津神社と鬼ノ城は、凡そ10km離れています。ミサイルの話ですね。

しかも、岡山市高塚の矢喰宮やぐいのみやにその弓矢が祀られているそうですので、現実感を出そうとしている内容ですね。


『矢で矢がぶつかる』 空対空ミサイルの話になります。

参考ですが、パトリオット(PAC-3)の対ミサイルの最大迎撃距離は30Kmです。そうすると、最適迎撃距離は10km辺り。偶然の一致でしょうか。

面白いことにこの矢喰宮縁起では、吉備津彦の矢を温羅がつぶてで撃ち落としたことになっています。

吉備津宮縁起では、矢が矢で落とされて、その場所が矢喰宮。そしてその矢喰宮では、矢で落とされることが否定されて、温羅が投げた礫で落とされることになっています。

たしかに矢で矢を射るより、礫をぶつけた方が矢に当たるように思います。

しかし、礫とすると、バルカンファランクス(Mk16)のことでしょうか?

パトリオットかバルカンファランクスかどちらにしても、現在を見来たような話です。


ついでに言えば、吉備津神社から井原に行く途中に、矢掛やかげという町があります。

『鬼ノ城縁起』には、温羅と吉備津彦は矢を打ち合った際、吉備津彦がった矢がそれて鬼ノ城の横の岩に当たり、跳ね返った矢がはるかに飛んで、大木に掛かった。その地が『矢掛』になったとの記述があります。

鬼ノ城と矢掛は直線距離で20Km。

10Km飛んで跳ね返って20Km飛んだ。現代のミサイル技術を超えています。


次は、『吉備津彦は二つの矢を同時に打つ』

弓を打ったことのある人はわかると思いますが、二つの矢を束ねると、射てても当たりません。

吉備津彦の強さを強調する文章ですね。

温羅が逃げ出す為の理由付けでもあります。


ここで、『矢』とは何か?現代のミサイルより強力な『矢』です。

これは何を意味するのでしょうか?

矢は、当時、遠方から人を殺められる最も強力な武器でした。

強力な武器、そして飛ぶ距離で、二人の強さを表していると考えられます。

それと共に、『矢』を軍事力、つまり軍団と捉えることも可能です。

『矢が空中でぶつかる』 これは、『二つの軍団が戦ったが、勝敗が付かなかった』と言えます。

そう考えると、吉備津彦が『二つの矢を同時に打つ』は、『二方面から攻撃して』勝利したことになります。


因みに、キリスト教の聖書に『右の頬を打たれたら、左の頬も差し出す』と言う記述があります。

これも、軍事的に両面作戦を意味しているという専門家もいます。


さて、次以降は、前の伏線文章『変幻自在』の回収文章ですね。

『温羅は雉になり、吉備津彦は鷹になった』

吉備津彦が桃太郎なら「雉を放った」となるべきですが、雉では相手を捕まえにくいので、鷹になったのでしょう。

雉は、平安時代から食されているので、獲物のイメージがあったのでしょう。

また、吉備津彦に猟師のイメージを重ねたのでしょう。

続いて『温羅は鯉になり、吉備津彦は鵜になった』

鯉を獲物のイメージで表したのでしょう。

倉敷市の鯉喰神社にこの言い伝えが残っていますので、前と同じく現実感を出すためでしょう。又、吉備津彦に漁師のイメージを重ねたのでしょう。


この二つのエピソードは、今でいう『変身ヒーロー』ものです。

古代の人たちは昭和・平成のテレビを見ていたのでしょうか?

しかし、この伝説では、残念ながら変身して弱くなっています。

これは何を意味するのでしょうか?

被捕食者・捕食者になった。コスプレしたと言えます。

つまり、温羅は『猟師や猟師を含む庶民に紛れた』そして、吉備津彦は『猟師や猟師を含む庶民の協力を得た』と考えられます。


さて、地域PRの部分です。

『温泉で癒す』

井原市美星町に鬼ヶ嶽温泉があります。

同じ様に、『温羅の血が流れ出した』

総社市に血吸川があり、温羅の血でできた川との言い伝えがあります。

これも現実感を出すためでしょう。


今回の最後、『温羅は、吉備冠者の名を吉備津彦に献上』

伝説では『名を献上』となっていますが、前回の話で出ましたように、『吉備冠者』は『吉備の若者』や『吉備の召使』の意味になります。

まともに考えれば、160歳の吉備津彦に『吉備の若者』を名乗れと言ったか、『吉備の召使』といったか、どちらにしてもイヤミをいったので、吉備津彦に首を刎ねられたと考えると筋が通ります。


吉備津彦と温羅の戦いの話としてはダイナミックですが、修飾を外すと、『吉備津彦の二面戦術で温羅は不利になり逃げまわったが、最終的に首を刎ねられて晒し物になった』と言うことです。

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