第11話 この大地に永遠の平和を
施策・政策に反対する者は次々死んだ。その三族(父や子や孫、父母兄弟妻子、又は自分の一族と父方母方の一族・妻の一族など)までもが。それは理不尽なことであり、非情で、倫理情愛に対する暴虐で、残忍な、悪しき古代の習慣であった。
誰もが呪詛など信じないが、誰もがそれを感じ、あまりの結果の凄惨さゆえ、信じなくとも事実であるかのように怖れた。
絶対に偶然ではあり得ない直感が誰にも生じる。
世間がそんな壓に圧し潰される中、清州は突如、バンド活動をはじめた。
渋谷の街の愚連隊から四人を集めたかと思うと、突如、渋谷交差点のど真ん中に、無許可でトレーラー・トラックを止め、天蓋のないその荷台の上で、まるで屋上でライブをやったビートルズばりにゲリラ・ライブを行った。
誰も知らない曲だったが、そらは全て、彝之イタルというヴォーカルのいたクヮドラプル・ヴイというバンドの曲だった。
最後の曲は、『この大地に永遠の平和を』であった。
詳細は『Ekstase-脱自態-』に重なるが、歌詞を残そう。
『ただ 欲しい ものは ひとつ
あたりまえな くらしの ある世界
たとえば 眼の前で 家族を虐殺されて
泣きまどう こどもたちの いない世界
いま ほしい ものは ひとつ
この 大地に 永遠の 平和 を
たとえ虚しい 夢で あっても
他に どんな ましな 生き方がある
この大地に永遠の平和を
二度と終わるこのない平和を
真実の世界を
本当の 人間の 世界を 』
喧々轟々、大批判非難の大嵐となった。
匿名の卑怯者たちはネットで叩きまくった。
狂気の沙汰だ。清州の敵は欣喜雀躍。
思い上がって狂ったか、政敵は皆そう思う。
一部で歌をSNS上に広めた。やや感動もあった。
鉄のよう坂上はそんな感傷には興味がなかった。
チャカ(拳銃)を手に入れた。
警備の実態はよく知っている。
街頭で演説する清州に向かって歩く。
まだ百メートルはあろう。
清洲が振り返った。
ニヤリと笑った。坂上に向かって。
そして、マイクを持って再び大衆に語りかける清州。これがその最後の言葉だ。
「運命という問題集に解答篇はない。正解などない。
現実に答はない。現実は、ただ、在るだけだ。世に大義はない。世は烏合の衆の集合でしかない。事実に同情も倫理もない。事実は、ただ、ドライに起こるだけだ。存在に解明はない。それは唐突と暴力だ。眞實は存在しない。全てが眞實だ。起こったことが眞實だ」
坂上は突如、胸に苦しみを覚えて倒れる。
清州は在任中さまざまなことを行った。それを語る日もいつか来るであろう。
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