第7話 絶対国家監視網

 絶対国家監視網は反社会組織やあらゆる官僚の陰謀や左翼の革命や清洲への抵抗勢力を監視し、取り締まる目的で設立されたものであったが、それをそのまま官僚組織がすり替えて逆に清州を監視することに重点を置く動きをする組織となった。

 清州に対して国家監視網が敷かれたのだ。無論、秘密裏だ。

 首謀者は総務省、財務省、国家公安委員会、警察庁だ。法務省や検察庁や防衛省も内諾済みであった。官僚はアルカイーダに似ている。実体のない柔軟な有機的連合で、かつ、実行力がある。

 清州龍國は監視下に置かれた。

 女性問題や裏金、不正経理や収賄、又はそれら以外もあらゆる法律違反が穿鑿された。ついには道交法違反まで調査されたが、何も出なかった、でっち上げる余地すらなかった。

「あいつは全てを読み尽くしているのか」

 そう、全てに手が尽くされたかのように明々白々に潔癖であった。

「こんなことがあり得るはずがない。用意していたかのように、すぐにシンプルで明晰判明な答が出てくる」


 退職して4年になる元警視であった坂上法童はかつての同僚であった警察庁長官に呼ばれた。坂上より五歳年下だ。

「かつての”名探偵”にぜひ頼みがあっって来てもらった」

「俺はもう引退してるんだぜ。組織を離れたなんだ。大嫌いな組織をな。お前は上司でもなんでもない」

「頼むよ、兄貴」

「ち、急に後輩になるな」

「清州を調べてもらいたいんだ」

「清州か」


 坂上は引き受けた。

 彼も解せない思いがあったのだ。

 まずは土佐に飛んだ。そして、何を思ったか、清州家の菩提寺を訪れた。なぜそんなことをしたのか、自身わからなかった。勘としか言いようがない。 

 檀家の台帳を閲覧し、ふと不自然な点に気がつく。

「これは」


「住職、ご協力に感謝いたします。

 地区ごとにまとめられているこの臺帳ですが」

「はて、何か」

「清州家というのは、この地域の旧家と伺っておりましたが」

「さよう、まことにそのとおりですな」

「臺帳にありません」

「何を、そんなバカな」


 住職は馬鹿馬鹿しいと言わん顔で台帳をめくったが。


 ない。



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