第2話 財界人

 官民合わせた国家の金融資産が莫大であることから、清州龍國は大減税法案を衆参両院本会議、常任委員会、及び増税に関する特別委員会を設けて、これらを全て通過させた。


 そして、不必要な増税を企んだ財務官僚を国家反逆罪で処刑した。その財産を没収した。


「悪には妥協しない。悪人に人権はない。悪を赦すことは、善き人々を虐げることに等しい。二兎追う者は一兎も得ずと言う。人は二兎を追えないのだ」


「また、これら巨悪を知りながら報道しないメディアも同罪である。ペンはかつて剣であった。しかし、今は拝金主義になり、芸能人を追っかけて金儲けをしているに過ぎない。志を再び高くせよ。悪を追及せよ」


 財界人が反駁した。

「所得税と住民税の基礎控除の引き上げによる減税には、8兆円規模の財源が必要だが、財源の裏付けがない」

「消費税率を5%へ下げれば、これの税収減も国だけで10兆円を超える。そんなに減れば、さまざまな歳出を削るか、国債という「借金」を大幅に増やすしかない」

「医療や介護、教育など生活を守る歳出が激減すれば、民衆の負担が増え、減税分など相殺されてしまう」

「結局は聞こえのいいことだけを言って、税制や財政をよく知らない若い層の票を集めた」

「税収減は国債を発行して賄えばいいという議員もいるが、国債は借金。借金が増えれば財政破綻への懸念から長期金利が上がって住宅ローン金利も上がるし、企業の設備投資への借り入れも苦しくなる」

「日本の格付けが下がり、日本への投資資金も引き揚げかねない」

「株価が心配だ」


 清州龍国はきっぱり言った。

「国債は借金ではない。

 日本の国債は、日本銀行や金融機関が購入しているものだ。元々は国民の金である。

 つまり、国民が政府に金を貸している。国民が借金しているわけではない。

 いや、国の借金ですらない。

 通貨発行権を背景として借り換え債の仕組みをもってすれば、国債の償還期限は、到来しない。むろん、国家のある限りだが。

 国債は貸借対照表上の負債に表示されるが、純資産と解釈することも可能で、国債は借金ではなく、国の財産と言える。

 しかも、国家には、それ以上の莫大な資産があるのだ。

 したがって、私は財界人にも国家叛逆罪を適応する法案を作成中であることを申し添える」


 経費削減のため、国家叛逆罪には裁判をしない法案も作り始める。




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