第3話 ムムーシィー現る

 俺たちの地元は海沿いにある小さな街だ。

 少子高齢化が進む過疎地。

 辺りにはダンジョンが少ないため、若者たちはダンジョンを求めて殆ど上京してしまうのだ。


 俺とプリナはとある薬屋を訪れた。

 別に薬が欲しいんじゃない。店のおじさんに挨拶を済ませて、二階へ上がる。


 ノックして扉を開けると、水色の髪の美女が、ベッドに寝転がっていた。

 全裸で。


「んあ?」


「よ、ムムーシィー」


「おぉ!! 一年ぶり〜」


 彼女はムムーシィー。

 一応、俺の幼馴染。


 こいつ、基本部屋に引きこもっているせいか知らないが、だいたいいつも全裸だ。

 かなりスタイルが良い方なのだが、ぶっちゃけ見慣れた。


 もはやこいつに性的興奮することは断じてないだろう。

 したときは精神が限界を迎えている時だろうな。鬱病一歩手前ぐらい。

 あれ? それって今じゃない? 一年の努力が無駄になった今じゃない?


 おかしいな、今日に限ってムムーシィーがえっちに見えてきた。

 マズイな、プリナの顔を眼に焼き付けて精神を浄化させないと。


 ムムーシィーは起き上がると、プリナを抱きしめた。


「会いたかったよおプリナちゃん。相変わらず可愛いね」


「あ、ありがとうございます」


「チューしていい?」


「それはちょっと……」


「そんな〜。んで、何のよう?」


 こいつは口が硬いし信用できる。

 俺は事の顛末を、ムムーシィーに伝えた。


「マジ!? じゃあスタリ山脈が更地になったのって……」


 恥ずかしげに、プリナが手を挙げる。


「他国の最新兵器だとか魔族の仕業だとか、いろいろ噂されているんだよ!?」


「ごめんなさい……」


 どうやらプリナの仕業だとは、誰にも知らないらしい。


「うーん、でもプリナちゃんがそんなに強くなったなんて……さすがプリナちゃん!! チューしていい?」


「それはちょっと……」


 本題に入ろう。

 ムムーシィーは無類のダンジョン配信好きだ。

 毎日家から出ずにずーっと配信を視聴しているのだ。全裸で。


 それ故に、ダンジョン関連の知識は俺より圧倒的にある。


「改めて、インベーダーズに入団する手段を知りたい。俺はもともと、メンバーの一人をぶっ倒して入れ替わる予定だったが、他にもあるんだろ?」


「まーね。確かに、プリナちゃんがインベーダーズの誰かと決闘して、手加減なしの全力ぶっぱをかましたら、間違いなく人型魔族だと思われるね」


「うん」


「たぶん死者もでるし、街一つ壊滅する」


「……うん」


「じゃあダンジョン配信をしよう」


 とある魔道具を用いれば、攻略の様子を配信することも、視聴することもできる。


 元々、ダンジョン攻略遠征の様子を外にいるメンバーが知るために開発された魔道具なのだが、一般化したのだ。


 いまじゃ進化を遂げて、コメントを送信したり金を寄付することも可能になっている。


「あ〜、俺もやろうと思ってた。名を売りたくて」


「さすがカルト。そうそう、有名になれば、インベーダーズ側から入団テストの招待状が届くの。ザコモンスター相手に手加減の仕方を覚えつつ、有名になっていく。てのはどう?」


 インベーダーズの団員相手に、微妙な力加減で戦うのはプリナには無理だろう。

 舐め過ぎればさすがに負けるかもしれないから。


 なら、どんなに力を抜いても勝てるモンスターを手加減の練習相手にしつつ名を上げるのは悪くない案だ。

 


「入団テストねぇ。冒険者ランクは関係ないんだろ?」


 ダンジョンの攻略や持ち帰った品々に応じて、冒険者ランクなるものがアップする。

 ちなみに、SからCまである。


「もちろん。たとえCでも実力があったり、最難関ダンジョン攻略に役立つ特技なんかがあれば、招待されるよ」


「よし。何にせよ、プリナには実戦を覚えてもらわなくちゃいけないし、配信をしよう。プリナ、それでいいか?」


 プリナがコクンと頷く。

 本当に大丈夫だろうか。やけに真剣な、思い詰めた表情をしているが。


 元来、ダンジョン攻略やら戦闘なんてやらないような子だったが、変な責任を感じているのかもしれない。


 それに、行方不明の母さんを救いだすという使命もあるし。


 ムムーシィーが俺を指差す。


「それより〜、カルトくんはどうすんの? 最弱になっちゃったんでしょ? プリナちゃんがめでたくインベーダーズに入団したら、終わり?」


「できれば……俺も側にいたい。プリナを一人にするわけにはいかない」


「ならプリナちゃん問題より君自身の方が大変じゃん。どうするの? 一から剣術を鍛え直すの?」


 そんな時間も才能もない。

 正直、俺は非力だし、運動神経も鈍い。

 反則みたいな修行があったから、最強になれたにすぎないのだ。


 その反則が使えない以上、別の手を考えるしかない。


「プリナの手加減修行をサポートしながら、考えていくよ」


「ん。あれ、ちなみに冒険者ランクは?」


「Cだ。同じダンジョンにずっと籠ってたし、配信もまったくしていなかったからな」


「あらあら。配信くらいしとけば、これから有名になる作業が省けたのに」


 俺の秘密の修行を教えたら、みんなしてあのダンジョンに来ちゃうだろうが。

 邪魔すぎて集中できなかっただろう。


「プリナ、とりあえずいまからダンジョンに行くぞ」


「う、うん!!」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※あとがき

作者は橋本環奈のクローンなのですが、家では全裸です。

応援よろしくお願いします。


♡とか☆とかコメントとかフォローとか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最弱冒険者の俺が史上最強の生物になった妹を介護する!! いくかいおう @ikuiku-kaiou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画