2023年11月20日 サポーター限定記事より

2023年11月20日 サポーター限定記事

タイトル:「書きたいもの」を見つけました


 

 初めての限定ノートです。緊張しています。

 どうして小説を書いているのか、何のために書くのか、そして何を書きたいのか。そんなことを書いてみたいと思います。


 今年はいろいろあって不調な年となりました。傷ついて落ち込んで泣いて眠れなくて。俳句だけはどうにか続けていたものの、小説を書くなんてことはできる状態ではありませんでした。でもそんな自分を励ましてくださる方はたくさんいました。おかげで短編を一作書き切ることができました。もう少し手直しをして本当の完結となります。


 『夜宵~トマトと卵のラーメン~』この作品の主人公はトランスジェンダー、サンプルは作者自身です。あくまでもサンプルです。実際に経験したこと、見聞きしたことも少し組み込んでいます。ラーメンを食べているだけで大したことは言っていないけど、それでもどうしてか悔しさが込み上げて、こんなの書いていいのかな、と何度も迷いました。でもやっぱり書いてよかった。読んでくださった皆さまには本当に感謝しかありません。


 性の多様性という言葉がよく叫ばれるようになりました。ここ最近は特に世の中が劇的に変わっているのを感じています。でもその変化が本当に生きやすさに繋がっているのかと聞かれれば、答えは「……」です。自分なんていなきゃよかったのに、どうしてもそう考えてしまうのです。方法が分からないだけで、ずっといなくなりたいと思っていました。

 

 不用意な可視化が怖いです。目の前にいる人がトランスジェンダーであること、そんなことは知らなくてもいいと思いませんか。優しさは嬉しいけど、ときに真っ向からの嫌悪よりも傷つくことがあります。じゃあどうしたらいいのと言われるかもしれませんが、何もしなくていいと思います。気にしなくていい。だって「同じ」がいいから。


 静かに生きていたいのです。いなくなりたいと言いながら静かに生きたいとも言う…なんて矛盾だらけで、なんてわがままなんでしょうね。こんなノートを書いてごめんなさい。多分どうやっても上手くまとめることはできないと思うのでこのまま突っ走ります。


 後悔していることがあります。自分に優しくできなかったこと。本当の自分を認めてあげられなかったこと。「普通」になりたくて諦めきれなくて散々自分に抵抗して、その結果たくさんの人を巻き込んで傷つけてしまったこと。いつの日か、自分の中のけじめとして、言葉にしてみたいと思うようになりました。


 こんな形でしか言えないなんて情けないけど、でもこんな形ででも少し話ができた自分を抱きしめてもいいですか。


 もちろん楽しいこともたくさんあります。交流してくださる皆さまのことが大好きです。でも、自分のこれからが分かりません。未来が見えません。ある日突然、いなくなりたいという気持ちに負けてしまうこともあるかもしれません。

 

 後のことは作品に落とし込んでみたいと思います。きっとこれが小説を書く理由で目的な気がします。吐き出したい自分を許してあげたい。それから先のことは、またそのときに。


 今の、ささやかな生きる目標です。



 ――――――――――



 この記事を書いてから、もうすぐ一年がたつんですね。書いた本人が、「うあああ、こんなこと書いてたああ」と震えたくらいです。でも「書きたい」気持ちは変わっていません。どんなに世の中が変わっても結局、壁を作っているのは自分自身なんですよね。何事も、自分次第。世間との間に壁を作っているのも自分ですが、その壁に守られて安心しているのもまた自分。矛盾していて、なんかちょっとよく分からないですね。

 もしかしたら、自分にとって創作とはその壁と向き合うための何か、なのかもしれないし、あるいは、そんな立派な意味なんてなくて、ただ吐き出したいだけなのかもしれません。とにかく。「書きたいもの」を見つけた、ただそれが言いたかったのでした。


 おかげさまで、この作品はたくさんの方に読んでいただく機会に恵まれました。本当にありがとうございました。皆さまの温かい応援がとても嬉しかったです。

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