第11話
「星来、そういえば来週、運動会だね」
「うん。たのしみ。せら、かけっこいちばん、なる」
「がんばってね。ママ、星来のカッコいい姿をビデオに撮るから」
星来の走りに気を取られて、地面を映すことのないようにしないと。
実は前回のお遊戯会で、それをやらかしてしまった経験がある。今回はちゃんと三脚を持参しようと、軽く心に誓ってみる。
「おべんとう、からあげね。あとたまごやき。たこしゃんウインナー」
「うんうん。星来の大好きなものをいっぱい詰めこんだお弁当にするから、楽しみにしてて」
「わぁーい」
星来の笑顔が弾けた。世界一かわいい私の息子。この子がそばにいてくれるだけで、私は幸せだ。
贅沢な生活はさせてあげられないが、星来のやりたいことはなるべくさせてあげたいし、たまには旅行にも連れて行ってあげたい。
片親だからかわいそう、とか。なにかを我慢させたくはない。
どんなことがあっても、私はこの宝物を守り抜く。
きっとこの子がいなかったら、私は母を殺した犯人への復讐のためだけに生きてきただろう。
荒んだ人生しか歩めなかった。私の人生を変えてくれたのは、この子と。
そしてもうひとり。
あの日死のうとした私を助けてくれた、彼。
クールに見えて誰よりも情深くて。
お節介で熱くて、仲間思いの人。
彼の周りには笑顔が溢れていて、そこは温かく優しさがあふれる場所だった。
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