第10話

***


「ママ、はっぱきれいね」


「そうだね。あれは何色かな?」


「あか!」


「正解。じゃあこっちは?」


「きいろ!」


「星来すごい! 全部正解だね」


頭をよしよしとすると、星来がニコリと微笑んだ。


残暑が遠のき、木々が赤や黄に染まり色鮮やかな世界が広がっている。空には青々と澄み渡った空が広がり、頬を冷たい風が通り過ぎていく。


日曜の早朝、まだ静まり返った公園に星来の声が響く。


日曜は仕事が休みだから、星来とゆっくり過ごすことができる。今日は散歩がてら、近所のパン屋さんに出かけた。


その帰りに公園のベンチに座り、紅葉を見ながら朝食用に買ったパンを食べている最中だ。


「くるくるパン、おいしいね」


「星来、口にケチャップがついてるよ。ほら、こっちむいて」


ウエットティッシュを鞄から取り出し、星来の口元を拭くと星来がじっとこちらを見た。


「ママもついてる」


「え?」


「きいろいたまご。せらふきふき、しゅるね」


「優しいね」


星来も私の真似をし、私の口元にウエットティッシュを押し付けて、優しくふき取ってくれている。


「はい、とれましたよ」


「ありがとう」


「どういたまして」


こんな風に息子と過ごす時間が、嬉しくてたまらない。心が安らぐ瞬間だ。

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