第8話
***
んっ……。
まぶたの裏に感じた光に導かれるように目を開けると、隣に寝ていたはずの息子の姿がなくて、ハッとして身体を起こした。
「星来?」
「ママ、おはよう」
ひょっこりと隣の部屋から顔を出した星来が、私めがけて走ってきて抱きつく。
「星来は今日も早起きだね」
「ママは、おねぼうさんね」
「ごめん、ごめん。今から朝ごはんの準備をするね。お腹空いたでしょ?」
「うん。せら、ばぁばのごはんあげたよ。おみずも。なむなむもしたの」
「星来、ありがとうね」
身体を起こし隣の部屋に行くと、棚の上にある小さな仏壇には、昨日の夕飯の残りのハンバーグと子供用のコップに入ったお水が添えられていた。
仏壇の上には、優しい笑顔を浮かべる母親の写真がある。
毎朝、そこに星来がご飯を添えて、ばぁばに話しかけるのだ。星来が生まれる前に母は亡くなってしまったから、星来は私の母親に会ったことがない。
もしも母が生きていたならば、すごく星来のことを可愛がってくれたに違いない。
母は未婚で私を産み、看護師として働きながら女手ひとつで私を育ててくれた。
私も母と同じ運命をたどるとは、思いもしなかった。母と同じ立場になって、自分の母親がどれだけ偉大だったかを実感した。
母が私の前で涙を見せたことはない。明るくてパワフルで、いつも笑っていた母。母は、私の太陽だった。
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