第6話

本当は星来に寂しい思いをさせている自覚がある。普段、めったにワガママを言わない息子だが、一度だけ私の前で号泣しながら癇癪を起こしたことがあった。


保育園に入園し、慣れない生活が続いたストレスも重なったのだろうが、星来に寄り添ってあげられなかった私に大きな責任がある。


保険のセールスをしていた時代。ノルマの圧力に押しつぶされそうな毎日だった。


【子育てママが活躍中。学校行事にも柔軟に対応します】そのフレーズに惹かれ、入社を決めた会社。


だが実際は、先輩ママが子供の行事で休みを取ると、それを他の誰かが埋めなければいけない状態。


とてもじゃないが、『私もこの日休みをください』とは言える雰囲気ではなかった。


そのため、私は息子の学校行事に顔を出すことが出来ずにいた。


申し訳ないと思っていたが、どうすることもできず。ただ生活のために仕事をする日々が続いた。


ある日、息子がお遊戯会の劇で主役を演じることになった。星来は観に来てほしいと何度も懇願し、私の前で号泣した。


そして、いつもどうして星来だけ誰も来ないの? なんでパパがいないの? そんな疑問をぶつけてきたことがあった。


私はただただ謝りながら、震える小さな背中を抱きしめることしかできなかった。


無力な自分。星来から父親という存在を奪ったのは私自身。


ダメなママでごめんね。

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