第11話 坂井登場!

 西陽がすっかり消え、田熊と狗飼は館を後にして牛久の街へ戻ってきた。彼らは、ヴャチェスラフが病に蝕まれながらも隠し続けた真実を追い求め、新たな手がかりを求めていた。そんな中、二人の元に一人の男が近づいてきた。彼はやや小柄な体つきで、カメラを片手に握りしめている。その目には、何か鋭い光が宿っていた。


「君たちが田熊刑事と狗飼だな?俺は事件記者の坂井だ」と男は自己紹介をすると、手早く名刺を差し出した。「聞いたよ、君たちが鬼退治のような仕事をしていると。まさに、この娑婆に巣食う悪党どもを一掃する…そんな話だ」


 田熊は少し警戒しながらも、坂井の目を見据えた。「記者がこんなところに何の用だ?俺たちは取材の相手じゃない」


 坂井は微笑みながら言った。「確かにそうだ。しかし、俺も長いことブラック企業や裏社会の実態を追ってきた。特に、最近はバルブと呼ばれる会社が不正に関与していると聞いてな。入手した情報によると、どうやらそこの上層部が君たちの敵でもあるらしい」


「バルブ…聞いたことがある」と狗飼がつぶやいた。「確か、あの企業はブラック企業として有名だったはずだ。従業員を過酷な労働環境に追い込み、待遇も最悪だと」


 坂井は頷き、「それだけじゃない。この街でバルブが絡んだ犯罪が起きている。それが、ヴャチェスラフともつながっているという話だ。何もかも一つの糸で繋がっている気がしてならない」と言った。


 田熊はじっと考え込んだ後、「お前の話には興味があるが、俺たちは一つの事件を追っているだけじゃない。奴らがどこで何をしているかも知らなきゃ意味がない」と答えた。


「それなら俺に任せろ」と坂井は自信たっぷりに言った。「奴らは、最近ウニの大量入荷をしている。だが、このウニが表向きの商売に見せかけて、実は裏の取引に使われているという話だ。どうだ、協力する気はないか?」


 田熊は少し眉をひそめたが、「面白い話だな。なら、お前もこの鬼退治に加わる覚悟はあるか?」と尋ねた。


 坂井は不敵な笑みを浮かべ、「もちろんさ。この娑婆で、俺も正義の鉄槌を下す時が来たようだ」と言い、彼らの前にある深い闇へと足を踏み入れる覚悟を固めたのだった。


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