第8話 樽

 ブラックヴァルハラの活動は徐々に各地に拡大し、彼らの手が及ぶエリアは闇に包まれていった。ある日、組織に新たな依頼が舞い込んできた。それは、「青島家の末裔」に関するものであった。


 青島家は古くから続く伊豆の名家で、その一族は武道と忍術を極めた者たちとして知られていた。しかし、時代の移り変わりと共に青島家の名は薄れ、今ではわずかな末裔だけが残るに過ぎない。その末裔の一人、青島静馬という男が、遺産を巡る陰謀に巻き込まれていた。依頼は、青島家の秘密を暴き、その末裔を守ることだった。


 黒川は仲間を連れて、伊豆の山奥にある古い青島邸へと向かった。家の中はひんやりとした空気が漂い、どこか異様な静けさに包まれていた。その中、黒川たちは隠し部屋に続く地下への扉を発見する。


 地下に降りると、そこには巨大な樽がいくつも並べられていた。その樽の一つから強い腐臭が漂っていたため、影狼が慎重に蓋を開けると、中には白骨化した遺体が詰まっていた。その遺体はかつての青島家の人間であり、遺産を巡る内紛の末に殺された者たちであることが後に判明する。


「こんな方法で一族の遺産を守ろうとしていたとはな…」黒川が呟くと、イワノフが冷たく言い放つ。「腐りきった一族だ。これでは呪われて当然だ」


 さらに調査を進めるうち、彼らは「逗子マリーナ」に青島家の隠れ家があるという手がかりを掴んだ。そこに向かうと、青島静馬が代々の家宝として大切にしていた薙刀が、屋敷の奥に飾られているのを見つけた。その薙刀はただの武器ではなく、青島家の者が自らを守るために使い続けてきた象徴でもあった。


 静馬は、その薙刀を握りしめると決意を固めた表情で言った。「俺は青島家の末裔として、家族の名誉を守るために戦うつもりだ」


 黒川は静馬に向かって静かに言った。「それなら俺たちもお前と共に戦う。お前の血に刻まれた宿命を断ち切る手助けをしてやろう」


 その瞬間、闇の中から静かに数人の刺客が現れた。彼らは青島家の秘密を守るために送り込まれた暗殺者たちだった。


「薙刀を持つお前こそが青島家の正当な末裔だ。俺たちがその証人になろう」と黒川が言うと、静馬は深く頷き、薙刀を構えた。その刃は月明かりに輝き、冷たい空気に震えていた。


 激しい戦闘が始まる中、黒川とイワノフ、リヒター、影狼の連携は見事だった。刺客たちは次々に倒れ、やがて彼らは静馬と共に青島家の呪われた過去を清算するための戦いを終えることができた。


 静馬はその後、青島家の名前を捨て、普通の生活を歩む決意をした。黒川は去り際に彼に一言だけ伝えた。「俺たちは再び裏の世界に戻るが、俺たちの名は決して忘れるな。俺たちは、ブラックヴァルハラだ」


 彼らは静かにその場を後にし、再び闇の中へと姿を消した。


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