ブラックヴァルハラ 10万

第7話 遠い昔

　イワノフは遠い昔を思い出していた。

　舞台は、荒廃したビルの一室。闇に沈む都市の片隅で、密かに存在感を放つその場所には、奇妙な緊張感が漂っていた。

　先に現れたのは、冷静で無表情な瞳を持つ男、黒川真一。元は警察の特殊部隊に所属していたが、ある陰謀に巻き込まれ、信頼していた仲間たちを失った過去がある。その痛みを胸に、彼は「この世の闇を自らの手で裁く」と心に決めていた。

「よく来たな、真一。お前の腕を信用している」

声をかけたのは、鋭い目つきと深い声を持つ男、イワノフ。裏社会で名を馳せた元スパイで、冷酷非情な手腕で知られていた。彼は今、裏切り者への復讐と、裏社会の支配を目指している。

　次に部屋に入ってきたのは、スーツ姿に、まるでクラシックな紳士のような風貌のリヒター。彼は元財界のエリートだったが、破滅と裏切りにより全てを失い、今は自らの野望を達成するために暗黒の世界に足を踏み入れている。

「この場所に、理想を持つ奴らだけが集まっていることを願うよ」

　リヒターの静かな声に応じて、最後の一人、タバコの煙をまといながら入ってきたのは、影狼。彼は伝説的な傭兵であり、冷徹かつ無口で、戦いにおいて絶対的な腕を持つ男だ。彼の鋭い眼差しは、全てを計算し尽くしているかのようだった。

「お前らのことは、信頼しているわけじゃない。だが、この世を変えるための力を欲しているのは確かだ」

　黒川の言葉に、全員が無言で頷いた。彼らには共通の目的があった。それは、腐敗した世の中に自らの裁きを下し、新たな秩序を築くこと。

「名前はどうする？」とリヒターが尋ねた。

「ブラックヴァルハラだ。伝説の戦士が集うヴァルハラになぞらえ、俺たちが新たな伝説を作る場所になる」と黒川が答えた。

「それでいい。俺たちが裁きを下す世界には、もはや神の手は届かない」とイワノフが口元に微笑を浮かべる。

　こうして、ブラックヴァルハラは結成された。彼らは互いに信頼し合うこともなく、目的のために冷酷に行動する。それぞれが持つ過去の痛みと野望を抱え、彼らは闇の中で新たな秩序を生み出すべく、動き始めたのだった。

---

　その後、ブラックヴァルハラの伝説は瞬く間に広まり、闇社会においても畏怖の対象となっていった。彼らの名は、まさに「ブラックヴァルハラ」の名にふさわしく、冷酷かつ強大な存在として裏社会の頂点に君臨していくのであった。