第5話 ペイペイ登場!

 田熊と狗飼は、冷たい風に背を押されながら、橋の先へと踏み出した。彼らの目の前には、イワノフが待ち受ける場所があった。そこには、薄暗い空間の中で何かが蠢いているのが見えた。


「この先は潮の香りがするな。まるで海の底にでもいるみたいだ」と田熊がつぶやくと、狗飼は少し安心したように頷いた。


「九州の海とは違って、まるで別世界だな」と狗飼が言うと、田熊は不敵に笑った。「俺たちは、この裏の世界に引きずり込まれているだけさ。演劇部の舞台に立っているようなもんだ。役者がどう出るか、あとは観客の反応次第だ」


 その言葉に狗飼は一瞬戸惑ったが、田熊の意図を理解する。「じゃあ、俺たちが主役ってことか?」


「そうだ、だからこの舞台を俺たちのものにする。イワノフに一撃をかますつもりだ」と田熊は言った。


 その瞬間、イワノフの冷たい声が響き渡った。「待っていたぞ、田熊刑事。お前は俺の舞台を無駄にするつもりか?」彼の後ろには、数人の部下が控えていた。


「イワノフ、今こそ決着をつける時だ!」田熊が叫ぶと、彼の隣で狗飼が一歩前に出た。


「お前のことは聞いている。あの豚箱から逃げ出したと言うが、それがどうしたというのだ?」イワノフは薄笑いを浮かべていた。


「逃げ出したのはお前だ。俺たちはお前の悪事を暴きに来た!」田熊が反論した。


 イワノフの部下はそれを聞いて立ち上がり、彼の顔に影が差した。「ならば、やってみろ。俺はペイペイと呼ばれる男だ。逃げることはない。お前たちがどんなに戦おうと、俺はこの場所から動かない」


 その言葉と共に、イワノフの部下たちが一斉に銃を構えた。田熊は周囲を見回し、橋の構造を再び確認した。逃げ道はない。まさに九州の強い潮流に逆らうように、彼は立ち向かうしかなかった。


「狗飼、先に行くぞ!」田熊が叫び、犬のように全力でイワノフに突進した。銃声が鳴り響く中、彼は一撃で部下の一人を倒し、続けてイワノフへと迫った。


「田熊、後ろだ!」狗飼の声が聞こえたが、田熊は振り返る余裕もなく、イワノフに向かってそのまま進んだ。


イワノフも反撃に出たが、田熊の集中力は鋭く、彼の動きをかわして反撃を加えた。「お前の悪事は、ここで終わらせる!」田熊が叫ぶと、イワノフは驚愕の表情を浮かべた。


「こいつは…一体何者だ!」イワノフが叫ぶと、田熊はその隙に再び攻撃を加えた。


 その瞬間、周囲からの銃撃音が鳴り響き、狗飼も合流してきた。「田熊さん、急げ!彼らが襲ってくる!」狗飼が叫ぶ。


「一緒に行こう!」田熊が声を上げ、二人は連携してイワノフに向かって突進した。


 イワノフは後退りながら、必死に銃を振るったが、二人の攻撃に次々と倒れていく。ついに、田熊がイワノフの腕をつかんで地面に押し倒した。


「これでお前の悪事も終わりだ。お前が裏カジノでやっていたことを、俺たちが暴いてやる」田熊が言うと、イワノフは苦々しい笑いを浮かべた。


「お前が何をしても、俺の仲間は裏で動いている。決して終わらせることはできない」とイワノフが言うと、田熊はその言葉に目を光らせた。




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