第4話「ここに来るまでに失礼な人に遭ってさ」(飛鳥視点)


アイスティーは今日も美味しい。

喫茶やぐるまそうの、ドアベルがなる。


聴きなれた革靴の足音。

里帆が来た。

お待たせしてごめんなさいと、走って来たからかツインテールはよれて元氣なく、しおれた花みたいになっていた。


夏菜が、下がってると言いながら髪を直しそのまま変に折れ上がった襟を直してあげる。


遅刻なんて珍しくね?里帆がさ

わたしも、そう思うと頷くと、テーブルにべちゃりと顔を乗せ一言。


あー疲れた。


疲れた?

私と、夏菜は高校の近くねこのお店まで電車に乗って来るけど、里帆はこの地域の子、店に徒歩で来るくらい近い。


朝家でなんかあった?と訊くと勢いよく首を振る。家族?犬のコタローさん?思い当たる事を聴くけど反応はない。


「はい、里帆ちゃんのアイスティー。あと三人分の季節のケーキ。」

「あ、ありがとうございます、ママさん」


三人揃ったところで頼んだケーキ。

先食べようと、頂きますをして。


人心地が、ついたとこで。

「今日ここ来る前、救急車呼ぶ事になってさあ、すごく緊張したし、大変だったんだよ」

「え?里帆が、じゃないな、家族の誰か具合悪いの?帰る?」

夏菜が顔色を変え。私もまさかと里帆の顔を見ると。

苦虫を噛み潰したような顔。


「ちがうよ飛鳥、通りすがりの人が目の前で騒いだから呼んであげたの」

「あら、里帆にしては辛辣な言い方」

「良い歳のおじさんが躓いて転んで、骨折した、救急車呼べと騒ぎ立ててさ」

「知らんふりしたらよかったんちゃうの?」

また夏菜。

私も言う。

「他に人居たでしょう?」


「みんな巻き込まれたくなかったんだよ。私も目の前で転んで目が合わなかったら逃げたんだけど」

「がっつり合ったんだ」

「しつこいし煩いしどうかすると周りも早く私に連絡してあげてみたいな視線くれてさ。

はじめての119も、説明どう伝えたら良いかしどろもどろだし、当人さんに質問してもなんか酒臭くてもう、呂律がおかしいと言うか」


「「あーそりゃ災難だったね」」




その後。話を聞いていたママから、試作品でよければと。クッキーを頂き。

今日の本題、夏休み何処行く計画を話し合い、解散。



「そういえば。」

夏菜が。

店の前で私も失礼な人に遭ったと言う話をして。

あれ?と思い。

「それ、黒の革ジャン来てた?」

問い掛けるとなぜか里帆も。

「黒の革ジャン?え?あれ、まさかズボンはカーキーで?」


「え。そうだけど。黒革ジャンにカーキーズボンにでっかいヘッドフォンして......」


「まさか、無精髭?まさか同じ人?」



今朝電車で見たと言う夏菜。私は横断歩道で。そして、里帆は、近所のスーパー近くで。


「「「まさか、おんなじ人?」」」


マジか。




「ねえ、飛鳥、夏菜。コンビニでアイス買って食べよ。もう少し話し聴きたいわ」

「私も」

「私も、聴きたい。とりあえずみんなおんなじ人の迷惑に遭ったなんてなかなかないよね」


とりあえず。

コンビニアイスと公園へ。

話は逃げない、お買い物のその後で。



お仕舞い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

ここに来るまでに失礼な人に遭ってさ STORY TELLER 月巳(〜202 @Tsukimi8taiyou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ