第3話里帆の場合

へーへーそうなんだ、なんて。

スマホでYouTubeを見ていたら。


コメント欄が面白すぎて、慌てて口を塞ぐ。

突然1人で笑い出すなんて、妙齢の乙女には恥でしか無い。

ここに、夏菜たちがいたら、きっとお腹抱えて笑ってくれてさ私も氣にせず笑えたのだけど。


誰か女の子が元彼に遊ばれて居た事に後から氣づいてしまいショックです、と言う書き込み。


そこに、様々な多分お姉様方、お嬢様方が

色々と励ましのメッセージをかきこんでいるのだがこれが面白い。


励ます何処までならわかるけどさ。


傷つけられたそ貴方の代わりに私が元彼に、何も無いところで蹴躓く呪いをかけておきます、と最初の1人が書き込み。


その他にも

指を挟む、足小指を挟む、足腰が弱くなり歩きにくくなる、電車に乗り遅れ続ける、みんなの前で転ぶ、などなど。


真面目に読んで、思わず吹き出す。

なんてユーモア。

なんて小さな呪い。


でも。

確かに、ショックを受けた本人にきっと良い人他にいるとか言われても、周りなんか見えないし、今はきっと元彼に何かしたいとか、思うよなぁて、所にこのメッセージ返し。


いや、小さな呪いならさ、許されそうな氣もするよね。


笑いそうだから読み返すのは我慢して。

正面をみた、その。

ふと。

目の前に。

不思議なものが今映り込んだ氣がして。


え?

乗り遅れたーって叫んで走っていたが

蹴躓いて、いってえ、ケツが、いや指!指が!誰かと。

黒い塊がモゴモゴ動きつつ叫んでいて。

うっかり無精髭の顔が見えた。


誰もが避ける中、目が合ってしまい。

腹を決めて。

119を。


救急車が来て。

男は運ばれていき。

状況説明を聞かれ、連絡先などを救急隊の人に伝え。


ふと腕時計は待ち合わせ時間を三十分は過ぎていた。目的地まで、までここからあと十五分は掛かる。


かつて無い遅刻。

とりあえずあと十五分遅刻する、ごめんとメッセージを友人達に送り、走る。


災難だなあ今日は、

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る