第3話 邪魔をして悪かったな
「いや~。昨日はすみませんでした。部長」
プロジェクトリーダーの近藤だ。
「予定休だから構わないよ。今日から今井さんの面倒を見てやってくれ」
「わかりました」と、言い、今井さんに挨拶をする。
この近藤という男、実は同期だ。
俺が近藤の上司になっているのは訳がある。
こいつは、管理なんかしたくない、技術者でいたい、といって、昇進を断っている変わった奴なのだ。
有能なのにもったいないと思うが、こればかりは本人の気持ちなので、どうしようもない。
「部長、今井さんかわいいですね。教えがいがありそうですよ」
近藤はニコニコしてやってきた。
「頼むから、手を出さないでくれ。揉め事は困る」
と、釘をさす。
そう、こいつは恋多き男なのだ。社内の女の子と恋愛しては別れる。
これでもイケメンなので、相手には事欠かない。
基本的に後腐れせず、円満に別れる事が多いが、時々泥沼になり、その度俺は担ぎ出されて、フォローをするのだ。
今井となんて、新入社員に手を出されては困る。
近藤は俺を見て、ニヤニヤしながら、
「そんな事しませんよ」
と、言って、彼女に教え始めた。
教える事には問題ない。こいつは何人もの新人を教えて、立派に育てている。
彼女もこいつに教われば一人前になれる日も遠くないだろう。
近藤が教え始めるのを見守る事にした。俺は管理の仕事もあるしな。
すると、近藤はべたべたし始めた。
距離が近すぎるだろう。揉め事はおこさないでくれ、と言ったばかりなのに。
俺は2人の間に入り込む。
そして、
「どう?今井さん。近藤の教えは。こいつ教えるのは上手いから、良く聞いてほしい」
と、今井さんに声をかける。
間に入り込まれた近藤は、面白くない顔で、
「部長は管理の仕事をしてください。僕が教えているのに邪魔です」
と言ってきた。
確かにそうだ。
今井さんは、どうしていいのか困った顔をしている。
俺は余計な事をしてしまったらしい。
「近藤、悪かったな。今井さん、邪魔してごめん。
近藤に聞いても分からない事が合ったら僕に聞いて」
と、席に戻った。
すると、近藤のつぶやきが聞こえる。
「なんか、坂下らしくないな」
そうかな?今までの新人と同じように接しているのだが。
俺は管理の仕事に専念する事にした。
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