43話 白鳥さんがこわくてかわいいいきもの
どうやら白鳥さんは、したたからしい。
そして正義感あふれる良い子だったらしい。
だからこうして、僕をおびき出すためにえっちに興味がある女の子の演技してたんだ。
僕は一杯食わされたんだ。
僕は騙されたんだ。
『騙しているのは主の方だがな』
『何故その情熱を1人に向けないのか』
「私だって…………さんがもっと真摯だったら……」
「え?」
なんだか下向いて両手を合わせたり離したりしながら、ひとりでぽつぽつ話してたシーニュちゃんもとい白鳥さん。
ごめんね、僕のお耳も心も体もしょんぼりしてるから聞き取れないんだ。
「な、なんでも! なんでもないです!!」
「そっかぁ……はぁ……」
僕は落胆した。
もう帰っていいかな。
「……アキノちゃんさん?」
「何? 今日はこれで」
「……ここで……その。 い、いかがわしいことできないからって帰るんだったら、私、さすがにアキノちゃんさんに幻滅しますよ……?」
「や、やだなぁ! そんな酷いクズ男みたいなことするわけないじゃないかぁ!! ほら行こう! この公園の出店、楽しみにしてたよね!!」
そうだ、この子は良い子だからクズ系の思考はマズいんだった。
……ま、まぁ?
普通に学年どころか学校全体でもトップクラスの清楚系おっとり系優しい系美少女との健全なデートできるんだ。
それだけでも一生ものじゃん。
うんうん、この子のぼんきゅっぼんな
「……アキノちゃんさんって、胸とか見てきますよね」
「ひゅいっ!?」
「まるで、男子みたいに」
「なななななんのことかな!!!」
「……変態」
「おっふ」
何この子、実はS?
……えっちなのはいけませんって言ってくる清楚系とか、最高じゃない?
「……まーた、えっちな顔してる」
「ししし失礼だなぁ、配信ではみんながかわいいとか美人って」
「目つきが、です」
じとーっ。
まじめな子のジト目って、こう……なんか来るよね。
あ、なんか目覚めそう……まぁとっくに目覚めてたけど。
うぅ……しょうがない、今日は罵られるモードで楽しもう……大丈夫、僕、前世は分かんないけど今世はどんなプレイも柔軟に対応できるだけの場数踏んできたから……。
◇
「屋台のごはんっておいしいんですね!」
「できたての定番の味だもん、おいしくないわけがないよ」
僕たちは公園の階段に座ってはふはふ言いながら、できたてほやほやな代償にぼったくりに近い金額の屋台飯を堪能中。
お祭りだもん、こういうのはお値段そんなに気にしちゃいけないんだ。
「あ、でも、アキノちゃんさんに……私」
「いいのいいの、僕の方が年上なんだから」
あ、もちろん白鳥さんにはおごったよ。
元々そのつもりだったし。
まぁ下心満載だったからだけども、冷静になって考えたらうちの高校でこの子とこんなことできてるの、現時点では僕しか居ないってすっごい役得だし。
「でも」
「妹のお世話してくれてるお礼だから気にしないでね」
ま、こういうのは男がすることだからね。
男の特権なんだ。
もぐもぐしながら困った顔をして僕を見上げてくるなにこのかわいいいきものお持ち帰りしたいいやいやダメだ今日は手を出しちゃダメなんだそれすると1回はさせてくれるけど次からは絶対デートでさえ乗ってくれないタイプなんだ僕はくわしいんだこういう子は時間をかけるべきなんだ。
「妹の。 そう、妹のお礼だから!」
「……別に、お世話とかそういうわけじゃ」
「や、だってあの子、話すの苦手でしょ?」
まぁ妹も姉も僕のことなんだけどね。
でもたぶん前世の僕はあんな感じだったからセーフ。
まぁ男として生まれた前世で、前世でもきっと学校に1人は居ただろう白鳥さんみたいな子にあんな距離感で話しかけられたら、たぶん返事すらできなかっただろうけども。
やっぱり男と女は違うんだ。
そう考えると今世の女の肉体も悪くはないよね。
「……黒木さん……あ、いえ、銀藤さんのお友達なんですけど……あの子もそうですけど、距離感って人それぞれだって思うんです」
「うん? まぁ、そうだね」
ジャンガリアンハムスターたちは両手でそっとすくい上げないとね。
「私、人と話すのにストレスとかあんまりないタイプなんですけど、たぶん銀藤さんとか……妹さんみたいな子は、そうじゃないんです」
「だねぇ」
黒木さんも最初の1週間、最初に話しかけた僕としか会話しようとしなかったし。
「そもそも人と話すよりも本とか読んでる方が好きみたいですし……私も本は好きなので、少しは分かりますし」
「まぁねー」
お、白鳥さんも本が好き。
今後の会話で推しジャンルとか推し作者とか聞き出さないとね。
「……でも、いいな……って思います」
「?」
もぐもぐ、ごくん。
何回か繰り返したあとに、ぽつりと言う彼女。
「だって、あの子たちは休み時間になった途端に開いて読みたい本がある。 なんだったら……本当はダメだけど、授業中にこっそりスマホ開いてでも知りたい情報があるんです」
「ほむ」
あー、この子、そういやそういうの見ても手を上げて「せんせー」とかするタイプじゃなかったね。
なんていうか、ほどほどに清濁併せ呑む的な?
まぁ本物の委員長さんじゃないし。
「帰宅部なのに、HRが終わった瞬間に席を立って急いで帰ろうとしてるし……きっと、帰ってから楽しみたいことがあるんです。 そういうときのあの子たちは、とっても楽しそうな顔してるんです」
へー。
黒木さんのこととかよく見てるんだね。
「それに、少し仲良くなってから、今読んでる本のこととか聞くと。 とっても楽しそうに教えてくれるんです。 ……私がぜんぜん知らないから、あんまり分からないことも多いんですけど」
それはしょうがない。
あの子たちは対人特化じゃなく対物特化なんだ。
……ていうかそもそも、本の内容とかあらすじ、事業内容とかセールスとか伝えるのって普通に会社員でも難しい技能だからねぇ……おしゃべりと説明は違うもんね。
「……だけど、私にはないんです」
「? ないの?」
彼女は、空になったプラスチックの安っぽい容器と、使い終わった割り箸をていねいにしまい直した紙袋を両手に、つぶやく。
「ええ、ないんです。 あの子たちみたいに、楽しめる何かが。 ……紅林さんとかだって、1日中熱中することがあるのに」
「やー、あの子たちは1分未満の動画とかファッションとか芸能関係」
「それでも提出物忘れるくらいに熱中できるんです。 私とは違って」
おやおや。
ふぅん。
「……しら――シーニュちゃん」
「前にも助けてもらったときに自己紹介しましたし、白鳥で良いですよ」
「んー、じゃあ白鳥さん」
「――優花、って呼び捨てで良いですよ」
「むぇっ!?」
「……アキノちゃんさん?」
「ああいやなんでもない、妹の口癖が移ったかなー!?」
なにこのかわいいいきもの。
上目遣いでさ、まだガードが固いって思わせといて「下の名前で呼んで♥」とかさ。
やっば、今全力でこの子お持ち帰りしたい欲抑えてるんだけど……?
『流石に自重せよ』
『下郎にも矜持は有る、そうだろう?』
◆◆◆
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