44話 白鳥さんがかわいい
「……ふぅん。 熱中できないのがコンプレックス、ねぇ」
「はい。 ……私、自慢になっちゃいますけど、小さいころからなんでもできたんです。 なんでも、大体1回教わればそれなりに」
なんか心の扉開いてくれちゃってる白鳥さん。
……これで食べちゃダメって地獄じゃない?
『男女関係無い友情という発想は皆無か』
『此奴、女関係になると知能が零になる』
「幼稚園の時からそうだったんです」
「……え? そんなちっちゃいころのこと覚えてるの?」
「はい。 ……ほら、小さいころから記憶力だって良いんです」
あー、早熟なのね。
しかも飲み込みが早い……そりゃあなんでもうまく行くわ。
たぶんその頃から飛び抜けてかわいかったんだろうし、そりゃあ周囲からちやほやされるわ。
……それでよく、こんなに真っ直ぐ……過ぎる性格に育ったねぇ……なんなの天使なの??
ここまで来て真剣な悩み相談なんだし声音と呼吸と心音と体温からのコールドリーディング的でホットリーディング的な何か的にも、ウソは話していない。
つまり――この子は、天然ものの良い子なんだ。
かわいくてなんでもできて、コミュ力抜群で先生からも友達からも特別扱いされる――普通なら絶対調子乗る性格になるってのに。
しかもおっぱいもでかい。
おしりもでかい。
天使かな?
天使だったわ……こんな子を組み敷く気まんまんで突撃した僕の浅はかさが恥ずかしくなるレベルで。
『主……!?』
『終に……!』
まぁ、こんな良い子を僕っていう悪い男が軽ーく話術で手籠めにして悪い子に育てるのも、それはそれでそそるんだけどね。
ほら、無知シチュとか光源氏シチュ的な?
『一瞬でも期待した我が阿呆だったわ』
『さっさと刺されろ もう助けん』
ひどくない??
「……アキノちゃんさんは、どうなんですか?」
「うん?」
「アキノちゃんさんも……って言ったら私、思い上がりすぎてると思うんですけど」
「ああいや、普通にそう言って良いと思うよ」
学校っていうリアルな場――幼稚園から高校まで――での模範生。
非の打ち所がなさ過ぎて嫉妬すらされない段階まで人気あるんだもん。
僕みたいに前世知識と経験で適当にこなしてきて、親からもらった見た目活かして好き勝手やってきたような大馬鹿者とは次元が違うんだ。
「インフルエンサーって言っても、しょせんはただの高校生だし」
「でも、ファッション関係の案件っていうの、もらっているんですよね?」
「うーん、虚業だからなぁ……」
「?」
「ううん、なんでもない」
年頃で何でもハマりやすくて依存先探してる女の子たちを囲ってるだけだからなぁ……そういう罪悪感は一応あるんだよね。
まぁその相手が女の子の体しか目的じゃない、しかも悪意のある男たちから同じことするにしても、肉体的には女の子っていう僕がやってるだけだし?
つまりは体の負担とリスクがほとんどないって名目でかすめ取ってるだけってのもまた理解してるから、あえてこうしてるんだけどね。
「……アキノちゃんさんみたいな芸能人も、まぶしいです」
「芸能人……」
「だって、みんなの前できらきらしていて。 ……紅林さんとか、あんなに楽しそうに教えてくれるんです。 アキノちゃんさんのこと」
「……まぁいいや。 それで?」
「あ、はい。 ……『普通の人』から憧れの目で見られる人だから、きっとその……疎外感とか……」
「うん、なるほどね。 感じなくはないね」
そっか。
この子の悩みは疎外感。
自分だけができちゃうから、自分だけが仲間はずれ。
そうだよね、たぶんだけどこういう子って先生と生徒の中間みたいなポジションだし。
「そういうポジション」って意識すると、その期待を裏切れないっていう無言のプレッシャーも感じるもの。
「……アイドルの人とかも、言いますよね。 悩みとか、誰にも」
「うん、言えない。 言っちゃいけないことが、いっぱいある」
「……アキノちゃんさんも、ですか?」
「うん、あるよ。 言えないし、言わない方が良いことがいっぱい」
例えば前世が男で、高校までずっと転生チートしてるとかね。
まぁ白状したところで誰ひとり信じないし、信じさせたところで意味もなく、ただの自己満足だし?
「……私みたいに年下の女の子を誘ってはえっちなことに持ち込む、悪い人っていうのは?」
「それは全世界に公言してるからね。 胸を張ってお天道様に顔向けできるよ」
「……くすっ、なんですかそれ」
なにこのかわいいいきも――
「……ばーかっ。 えっち、すけべ」
「 」
「女の子に目がない、悪ーい人っ」
「 」
『心の臓が!?』
『純粋さ……それが更生の鍵だったか』
……はっ!?
危ない危ない、破壊力高すぎて心臓が跳ねて数秒止まってた……なにこれこわい。
分かった、この子は天使なんだ。
尊死させて魂を地獄に運ぶっていう、僕みたいな悪いのに特化した、悪魔みたいな天使。
「――でも」
「むぇ?」
よし、再起動。
今ので1回死んで耐性できたし、もう大丈
「そんなアキノちゃんさんのこと――嫌いじゃ、ないです」
そんなことを上目遣いで――――――――僕はもうダメだ。
「……え? ちょ、アキノちゃんさん!? だ、大丈夫ですか!?」
ごめん、だいじょばない。
焦点が合わなくなって、空間認識能力がなくなって――気がついたら肩を支えられていて、慌てる声が耳元でする素敵さをおぼろげに感じながら、僕は考える。
かろうじて保持してる意識の中で、僕はだらんと脱力し、彼女が僕を抱き上げる形になっている。
ごめんね、でも正直そのおっぱいがたまらない。
……いやいや、いやいや。
――もうちょっとだけ、まともになろうって、思った。
◆◆◆
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