第4話 夢見るように触れる(5)

「眠くなってきた?」

「少し……」


 大きなベッドの上で裸のまま布横たわっていると、紫貴がアイスクリームをもってきてくれた。見たことないブランドのイチゴ味のアイスクリームだ。彼は私を抱き起こし、彼の胸を背もたれにさせてくれた。

 裸の私を後ろから抱きしめる彼もまた裸だ。しかし、私のお腹に回される腕には龍もいれば鯉もいるし、私の足に絡まってくる両足には天女もいれば悪魔もいる。


(すごいなぁ。天国と地獄に抱きしめられてるみたい……)


 彼の右腕にいる龍の頭を撫でながら、彼の胸に凭れ、アイスクリームを一匙すくって食べる。アイスを口に入れたときに体が乾いていたことに気がついた。もう一匙すくって紫貴の口元に寄せる。彼はそれをぺろりと舐めると、息を吐いた。


「ね、みどり、ここにいて。俺が好きだろ」


 彼の声が少しかすれていて、それすら、好きだと思った。だから私は彼の誘いに――頷いた。


「シャッ!」


 彼が急に大きい声を出してガッツポーズをした。あまりにも子どもっぽくて、ケラケラ笑ってしまう。彼もまたケラケラ笑った。


「なら決まりだ。明日、朝一でホテルの荷物取りに行こう」

「そしたら午後は家具屋さんよ。紫貴、『今、お金、どのくらいあるの』?」


 紫貴はクククと私の耳の近くで笑った。


「任せろ。うなるほどある」

「アハ、何それ」


 笑いながらイチゴ味のキスをし始めたら、自然とまた抱き合ってしまった。


「しがみついて、みどり」


 押し倒されて早急に求められてもいいぐらい、私の体は彼に媚びている。私が濡れれば彼も濡れ、彼が揺れれば私も揺れる。海のようにどこまでも波が続いて、私は溺れて、息もできない。だけどやめられない。


「連れてって、どこにだってついていくから」


 同僚の突然死から初めて、心から安らいだ夜だった。

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