第4話 宿泊
真夜中になるころには、かなりゲームをやりこんでいる健一とほぼ互角になった。
「そろそろ帰らないと」と弘樹。
「もう泊まっていけよ」と健一。
「泊まれるように、弘樹君のお母さんに私が電話してあげるわ」と優香が言った。弘樹はなぜか少しうれしかった。
日付が変わる時刻までゲームをした。それから風呂に入って、健一の部屋に布団をひいてもらって床に就いた。弘樹は全く寝られなかった。健一はひどいいびきをかいて寝ている。
少し外を歩きたかったが、人の家でそれはできない。だからトイレに行くことにした。そっと階段を下りていくと、裕香がまだ起きていた。
「あら、どうしたの?」と優香。
「目が覚めてしまって」と弘樹は正直に答えた。
「そうなの。ならちょっとお話しない?」と優香。
「はい」と弘樹は誘われるままにリビングルームに入った。
「弘樹君、今日はありがとう」と優香。
「いいえ。ぼくのほうこそ、ごちそうになって」と弘樹。
「あんなに楽しそうにしている健一を見たのは久しぶりだわ。弘樹君のおかげよ」弘樹。
「とんでもないです。お母さんがやさしいからだと思います」と優香。
「そうかしら。あなたのお母さんも、きっと心の中ではあなたのことを大切に思っているわ」と優香。
「そんなことはないと思います。本当の親子ではないですから」と弘樹。
「え?」と優香。
「ぼくは父の連れ子で、姉は母の連れ子です。妹は今の両親の子供です」と弘樹。
「ごめんなさい」と優香。
「いいんです。弱くて何もできないぼくが悪いんです」と言うと、弘樹は胸が苦しくなって涙があふれ出た。
裕香は思わず弘樹を抱きしめた。「あなたはとても強いわ。弱くなんかないわよ」と優香。
「そんなこと言ってもらえるの、初めてです……」と気がつくと弘樹は夢中で泣いていた。寝間着越しの裕香の胸の中は柔らかくて心地よかった。
裕香はしゃくりあげる弘樹をソファーに座らせた。「大丈夫よ。今晩は私が一緒にいてあげるから」と裕香はあやすように弘樹の頭と背中をさすった。裕香は弘樹と目があった。それから唇を重ねた。裕香はネグリジェを首までたくし上げて胸を弘樹の顔に押し付けた。二人は下着を脱ぎ、体を重ねた。
弘樹は健一の部屋に戻ってぐっすり眠った。翌朝、弘樹は健一に起こされた。三人で朝食を食べ、一回だけ健一と格闘ゲームをし、そして「お暇します」と言った。
裕香は「またいつでも遊びに来てね」と答えた。
弘樹はドアを開けて外に出た。日差しがまぶしかった。
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