第7話 ヘイアン名物と大人の対応
この頃都に流行るもの。
ヘイアン名物が目の前に運ばれてきたことで、ぱあっと
「これは何という料理なのぉ?」
「これは
「うなぎぃ? すっごくイイ匂いねぇ! こぉんなに美味しそうなご飯を奢ってくれてありがとう、
ぎゅうっと愛染が隣に座る安孫の腕に抱きつく。
「お気に召して頂き、恐悦至極にございまする……」
ずんとした表情で、安孫がほんの少し
「あらまぁ! ほんっと色男よねぇ、安孫ちゃん!」
安孫の複雑な心中が分からないのか、愛染が、ぽぉ〜とその横顔に見惚れる。
「はは。四神殿にお褒め頂き、これまた恐悦至極にございまするな……」
終始遠い目で一点を見つめる安孫。その心中は穏やかでない。それは自腹で彼らに高級料理の【鰻の白蒸し】を奢るからか、それとも四神の一人に見惚れられているからか。
「いつまで左様に不甲斐ない御顔でおられるのか、安孫殿。日の本一の武人として名高き、春日八幡神の名が聞いて呆れますぞ」
愛染の隣から、しれっと
「んんっ、愛染殿は感情表現が豊かにございまするなぁ?」
「当たり前じゃない。私は幻楼に生きる玄武の愛染よぉ!」
愛染が人差し指を唇に寄せ、うっとりとした声で言う。
「うふふ。こう見えても両性具有だから破瓜だって――」
「おおい! 変態女ぁ! それ以上くっちゃべてると、てめえの脳天に雷落とすからなぁ!」
端の席から、
「あぁん、がぁ君! そんな酷い言い方したら、私泣いちゃうんだからぁ!」
「うるせえんだよ! てめえはこんなんで泣くタマじゃねえだろうがぁ!」
「心が……! 心が泣くんだからぁ!」
騒々しい四神の二人に、牙琥の目の前に座る
「これはっ……! 何とも美味じゃのぅ。酒があれば尚更良きじゃな、牙琥」
「確かに
牙琥もまた鰻の白蒸しを気に入り、店主に向かい追加で酒を注文した。
「良いのう。昼間から飲む酒は格別じゃ。どれ、
わしもご
麗清の隣に座る
「ちょ、
こそっと注意する麒麟に、隣に座る満仲が涼しい顔で笑う。
「なぁに。安孫のすけは、あの春日家の嫡男じゃぞ? 金ならたんまり持っておる。気にする方が無礼に当たるぞ? のう、安孫のすけ」
「う、ううむ。まあ、四神殿をもてなすことが出来るならば、それで良いか」
武人として腹を括り、ようやく安孫にも笑顔が見え始めた。
「さすが安孫ちゃんだわぁ! それじゃあ、この愛染ちゃんも飲んじゃうわよぉ!」
おじさーん、私にもお酒ちょうだいなぁ! と愛染が愛嬌たっぷりに注文する。
「はは。それじゃ、おれも遠慮なく。
麒麟が隣に座る少年に向かい、「うーん」と思い悩む。見てくれは少年だが、彼もれっきとした四神。その命だって、自分達よりもずっと長いものだろう。何なら、この中ではおれが一番の年下か……? そんな風に麒麟が思っていると。
「あ、僕のことは、お気になさらず。いくらでもじゃんじゃん飲まれてください。どれだけへべれけになろうとも、僕が皆さんをシラフに戻しますから」
頼もしい言葉に、羽邏の目の前に座る水影が笑う。
「何とも四神の中では、羽邏殿が一等大人であられるようですなぁ?」
チクリと刺す水影の言葉に、羽邏を除く三神の肩がドキリと跳ねた。
🌸席図🌸
牙琥 安孫 愛染 水影
麗清 満仲 麒麟 羽邏
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます