第6話 婚約

 次の日、昼食を終えて設計室に戻ると、松本と山川が立ち話をしている。


「四谷君、聞いた?吉田が製造部の山本と婚約したそうだよ」と山川。


「そうなんですか。知りませんでした」と正敏。


「破れ鍋に閉じぶたとはよく言ったもんだよ」と松本。「吉田さんには早く寿退職してほしいね。」


「四谷君が吉田と付き合ってたって噂だけど、本当?」と山川。


「ええ、まあ」と正敏。


「男女の仲のことはわからないねえ」と松本。「変な女に引っかからないように気をつけなさい。」


「はい」と正敏。


「やり逃げ出来てよかったじゃない」と山川。


「そんなんじゃないですよ」と正敏。


「隠さなくてもいいよ」と山川。「残業の時はいつも二人きりにしてあげていたんだ。」


「知ってたんですか?」と正敏。


「もちろんだよ。吉田は四谷君の前では女の顔になってたからねえ。それに大した仕事をしていない吉田が残業なんておかしいだろ」と山川。「それで、吉田ってどうなの?」


「どうって?」と正敏。


「また、とぼけちゃって。あれの具合ですよ」と山川。


「そりゃあ、悪くないですよ」と正敏。


「どんなふうに良かったの?」と山川。


「締まってます。とにかく狭くて」と正敏。


「気持ちいいんだろ」と山川。


「最近、全部入るようになってからは」と正敏。


「四谷君専用になったっていうわけだ」と山川。


「蓼食う虫も好き好きだね」とあきれ顔で松本が言った。

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