第5話 謝罪

 次の日の残業の時間に、「四谷君、話があるの」と明子は正敏に話しかけた。「製造部の山本君がここに来るから、話をしてもらえないかしら。」


 山本達也は明子と同期入社の男性社員である。


「いいですよ」と正敏は答えた。


 しばらく待つと、携帯で呼び出された達也が部屋に入ってきた。走ってきたのか、達也は小太りな体を上下させながらハアハアと息をしている。


 達也は、部屋の奥のほうにいる四谷を見つけると、目を吊り上げて近づき「四谷!お前、吉田をもてあそんだな!」と怒鳴った。


「何のことでしょうか?」と正敏。


「とぼけるな!」と達也。「明子を無理やり押し倒したそうじゃないか!」


「不快な思いをさせてしまったようでしたら、吉田先輩に謝罪します」と正敏。「申し訳ありませんでした」と立ち上がって明子に向かって頭を下げた。


 達也は拍子抜けしたような顔をした。「いいのか、明子?」と達也は言った。


 明子は達也の後ろから腕をつかみ「もういいわ。ありがとう、達也君」と言った。

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