→(プロローグ)→プロローグアフター


 「ふわぁ……っ」

 「あははっ、すっごくおっきなあくびしてる~♡」


 ベッドに寝そべりながらあくびをかますと、陽咲に笑われた。いつものように頬っぺたをつんつんされ、ちょっとだけ恥ずかしい。

 これ以上のちょっかいを避けるべく、ふいっと顔をそらせば、窓の外が目に入った。

 カーテンの隙間からは、月明かりが覗いていて。

 

 「もうすっかり夜になっちゃったね♡」 

 「そう、だな。おかげですげー眠い」

 「……眠いのは春風がたくさん運動したからでしょ?」

 「ぐっ」


 陽咲からの追及に、ついくぐもった声がもれてしまった。

 というのも、陽咲と二回したあと、追加で三回ほど行為を重ねたことをツッコまれてるわけで。

 さすがにいまは突っ込んでないけども――って、そういう話でもないか。


 二の句が継げないでいると、耳元にほっかほかの吐息がぶつけられる。


 「(ねねっ、満足できた?)」

 「そ、それはもう……」

 「(そっか♡ じゃあさ、心の方はどう?)」

 「……っ、自信をもってうなずくことはできない。けど、つかえが取れた感じはするというか、陽咲のおかげで前向きにはなれそうだ」

 「そっかそっか……♡ あたし、ちょっとは役に立てたんだ……」


 噛みしめるように呟く陽咲に、全力で首を横に振ってやった。


 「え……? もしかして役に立ててなかった?」

 「違う。"ちょっと"じゃなくて"すごく"だぞ。まぁ、"めっちゃ"でもいいし、"日本一"でもいいかもしれないな」

 「っ♡ なら"世界一"でいいじゃん。あたしの器はワールドクラスの大きさだし」

 「いや"宇宙一"だろ、なに言ってんだお前」

 「あ~! 取ったぁ!? 次あたしが使おうと残してたのに!!」

 「こういうのは早い者勝ちだ」

 

 ふふん、と勝ち誇った顔をしてやったら、陽咲がぷくーっと頬っぺたを膨らませている。

 どうやらこの勝負は俺に軍配が上がりそうだな。いつぞやの仕返しも出来て大満足だ。

 なおも得意げに鼻を鳴らしてると、とつぜん柔らかなものが顔に押しつけられた。

 感触的におそらく陽咲のおっぱいだろう。


 「おまっ、いきなりなにす――んっ」

 「あっ……♡」


 口を開けた瞬間、グミみたいな感触のものが滑りこんできて、思わず口に含んでしまった。

 ちょうど口寂しいなと感じてたので、このまま吸いつくことにする。


 「んっ♡ やっぱり春風のからかいを封じるにはこれが一番だよね♡ にしても相変わらず幸せそうな顔しちゃってさ~……あれ、春風?」

 

 ヤバい、おっぱいを味わってたらマジで眠気が強くなってきた。この魅惑の果実には赤ちゃん返りの効果でもあるのか、とぼんやりした頭で思う。

 ダメだ、すげー眠い……。


 「眠いんなら寝てていいよ♡ 今度は寝顔の写メ撮っちゃうけど♡」

 「ん……ぅ」

 

 陽咲がなんか喜んでるみたいだが、意識が飛び飛びでよく聞き取れない。

 無意識におっぱいから口を離し、視界がだんだんと狭まっていく。夢と現のはざまに迷い込んだような感覚に支配されていき。


 まだかすかに色が残った世界で、陽咲が口を動かしてるのが見える。


 「(――はるくん、◤大好き◢だよ)」


 意識が夢の世界へと落ちていくなか、唇になにか柔らかで、温かなものが触れた気がした――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る