第24話 女友達とのビデオ通話その1


 陽咲が帰った(今度は本当に)あと、もろもろの作業を終えた俺は、ベッドに寝そべっていた。

 壁にかかった時計はすでに午後十一時を指しており、良い子はもうおねんねの時間である。

 俺としても寝るつもりでいるのだが、さっきから息子がだだをこねてるせいでそうもいかないのだ。


 原因はわかってる。今日一日でいろんなことが起こりすぎた。それも性的欲求を刺激する方面でばかり。

 陽咲と隙あらばキスしまくったり、パンツを見せてもらったり、おっぱいまで揉んだり吸ったりしてしまったのだから。

 おかげでずっと興奮が収まらない。どうしようもないほどに下腹部が熱い。

 座禅をして心を無にしようとしても、違和感でそれどころじゃないし。


 「はぁぁ……こりゃもう一回抜くしかないか……ん?」


 本日何回目かのルーティーンをこなそうと起き上がったとたん、スマホから音がした。

 手に取って確認すると諸悪の根源(?)である陽咲からのよう。


 『亜澄/ビデオ通話しよ~?』


 「なんか話したいことでもあるのか? ま、いいや。オッケーだぞ、っと」


 返事を返したところで、すぐさま画面が切り替わる。画面内に見慣れた女友達の姿が映り、見慣れない格好をしてるのが目に入った。

 モコモコとした部屋着――おそらくパジャマだろう。可愛らしいデザインをしたそれを見てると胸がドキドキしてくる。

 制服や私服を目にしたことはあるが、パジャマ姿は初めてだったからな。てか、ビデオ通話自体初めてかもしれん。


 内心で意外に思ってる俺をよそに、お風呂上がりだからか頭にタオルを巻いてる陽咲が、ひらひらと手を振ってきた。


 『もしもし~、あたしあたし♡』

 「悪いがうちには金ないぞ。だから振り込んだりはできないな」 

 『こーら、詐欺師扱いすんな♡ あたしはあんたの女友達のひーちゃ――陽咲ちゃんだぞ~?』

 「あぁ……美人局の方でしたか」

 『せいか~~い♡』

 「おいっ! そこは否定しろよ!」


 流れでツッコむとニヤニヤいじらしげに笑われた。どうやらお気に召してもらえたらしい。

 まるで夫婦漫才をやってる気分なんだが、それはさておき。

 

 「それで、なんか用か?」

 『んーとね、ピロートーク、しよ?』

 「誤解を招くような発言はやめろよ。そこまでいってないだろーが」

 『え~? でも春風はいってたよね♡』


 陽咲が見せつけるように手の上下運動を始めたので、俺は慌てて顔をそらした。

 いまの状態的にそれはあまりにも刺激が強すぎる。頭のなかで素数を数えて気を紛らわせる俺の耳に届く楽しげな笑い声。

 ほんとに隙あらば煽ってくるなこの女は……!


 これまで以上に悶々としていると、画面内から上擦った声が。


 『それにしても春風ってば、さっきは赤ちゃんみたいで可愛かったなぁ……♡ あたしのおっぱいに必死で吸いついてくるんだもん♡』

 「っ、それは、お前が吸っていいって……」

 『たしかに言ったけどさ、まさか三十分以上もするなんてね♡ おかげで先っぽ、ふやけちゃってたんだけど♡』

 「うっ」


 陽咲の呆れたような声につい、くぐもった声がもれる。なんせ彼女の発言は事実だったからな。

 こっちの体感としては一分ぐらいのもんだったんだが、気づくとマジで三十分以上経ってたのだ。

 でもそれはコイツのおっぱいが美味しすぎたせいであり、止めどきがわからなかった、ということだけ伝えておきたい。

 目でその旨を伝えてみるものの、陽咲はなおも呆れた様子でため息を吐いていて。


 『しかも「もう片方の味も確かめたい」とか言って吸い始めるし。あんたのおっきくなったあれを手でさせられるしで――』

 「――いやいやっ! それはお前が『こっちも吸わないの?』だとか『おっきくなったココ、慰めてほしくない?』だとか誘惑したせいだろ!? 俺は悪くないっ!」

 『でも決断したのは春風じゃん♡』

 「あれはもう誘導尋問だろ!」


 あーだのうーだのとお互いの主張をぶつけ合う。必死な俺に対し、小悪魔な笑みでこっちを翻弄してくる陽咲。

 この女にとっては俺をからかうための最高のネタが手に入ったようなもんだからな。

 ……まぁ、かくいう俺も最高のオナネタが手に入ったわけだけどさ。


 「――って、違う違うそうじゃない! なぁ、そろそろこの不毛な争いはやめにして……――そうだ! せっかくビデオ通話にしてるんだし、陽咲の部屋見せてくれよ! 俺ずっと気になってたんだよな」

 『もちろんいいよ♡ 春風にだけ……あたしの部屋、隅々まで見せたげる♡』


 俺の発言にはにかみながら、陽咲がスマホを手に取ったらしい。

 ゲームのように画面が揺らぎ――室内の様子がよりはっきりと、俺の目に飛び込んできた。

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