第13話 そして俺は、女友達のパンツを


 「うぉ――っ!」


 突然スカートをめくりあげられたもんだから、反射で顔をそらしてしまった。

 心臓は全力疾走したときのようにバックバクしていて、顔は熱でもあるかのように火照ってしまっている。

 こ、この女……いくらなんでも躊躇なさすぎだろ。男には心の準備ってものがあってだな。


 「なーにその反応? 春風ってば見たくないの?」

 「いや見る、見るけどさ……そんな簡単に良いのかなって」

 「んー、べつに減るもんじゃないし」


 背後であっけらかんとした反応を返す陽咲。減るもんじゃないんなら、なんで陽キャどもにはブチ切れてたんだろうな? ニヤケ面がキモかったからか?


 とはいえ余計な茶々をいれてチャンスをふいにしたくもない。

 高校生男子にとって垂涎の代物であるそれが、振り向いた先にあるんだからな。しかもパンツの持ち主は、美人の女友達ときたものだ。

 見せてくれるっていうのなら、見る。言葉も思考も、これ以上はいらないよな。


 俺は努めて平静さをよそおいつつ、黙ってそちらを振り返り――、

 

 「――って、パンツじゃねー!」


 視線の先にあったのは、短パンだった。体育の授業で使うやつを下に穿いてたらしい。

 ついがっくりと肩を落とす。パンはパンでも食べられないパンは? という問いかけをされた気分なんだが。

 これはこれでエロいけど、やっぱり違うんだよ。俺が見たかったのは、お前のパンツなんだよ……。


 感情のジェットコースターに乗ったせいで疲弊する俺を、ニヤニヤといじらしげな笑みで陽咲が迎えてくれる。完全に「してやったり!」な顔だ。男心を弄びやがって。

 恨みがましい目をぶつけてやるも、陽咲に動じた様子はなく。

 むしろ、わざとらしくスカートをはためかせながら、こちらに近づいてきて。

 短パンを見せつけながら、目の前で上擦った声をあげた。


 「春風に選ばせたげる♡」

 「は? なにをだよ」

 「……あたしが自分で短パンを脱ぐのと、あんたがあたしの短パンを脱がせるの、どっちがいーい?」

 「っ!?」

 

 それは、あまりにも甘美な誘惑だった。

 驚いて顔をあげれば、陽咲が小悪魔のような笑みを浮かべて、二本指を立ててみせる。ピースサイン、ではなくて、選択肢が二つありますという意味だろう。

 

 「そ、そんなの……」


 選べるわけがない。俺にとってはどちらも魅力的だったから。

 だが、選ばなければパンツを見ることは叶わないのもまた事実で。


 「……っ」


 俺はパンツを穿いてるか穿いてないか問題のとき以上に、頭を悩ませた。

 陽咲に一度脱いでもらった後にまた穿いてもらい、それを俺が再び脱がせるという選択肢も考えたが、彼女にめんどくさがられたら終わりだ。

 せっかく訪れたチャンスを棒に振りたくはない。結論を、出さなければ――。


 「ほらほらぁ、どっちにするの~? 早く選んでよ♡」 

 「っ、俺は…………俺が、脱がせたい、です」

 「そっかそっか♡」


 苦渋の決断を下した俺を讃えるように、陽咲がポンポンと肩を叩いてくる。流れで頬っぺたにキスを落とされたが、上手く反応できずにいた。

 俺の脳内はもう、彼女のパンツのことでいっぱいだったから……。


 ごくりと生唾をのむ俺の耳元で、陽咲が甘い音を奏でてくる。


 「(じゃ、脱がせていいよ♡)」

 「っ、あぁ……」


 その場に立った彼女がスカートをめくり、再び目の前に短パンが現れた。俺は震える手を伸ばし、それに触れると。少しずつ、一歩ずつ、ずり下げていく。

 時間にして三十秒ぐらい……いや、もっとかかったかもしれないな。


 「……すげぇ、これが陽咲の……」


 ひざ下まで短パンを下ろしおえた俺の口から、感嘆の声がもれた。視界いっぱいに広がるそれに、目が釘づけになる。

 クラスカーストトップの陽キャ女子であり、息をのむほどの美人でもある女友達が穿いてたパンツは。

 純白の布地にちっちゃなリボンがついた、とても可愛らしいものだった――。

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