第12話 女友達による無自覚な誘惑?
「んん~……今日も疲れたぁ~♡」
「おいこら、流れるように寝っ転がるんじゃない」
学校終わりにまっすぐうちに帰宅し、今日は部屋でのんびり過ごそうと決めた俺たち。
自室に入った瞬間、慣れた動きでベッドにダイブする女友達に呆れ混じりのため息が漏れる。と、そこで俺は気づいた。気づいてしまった。
飛びこみの勢いが強かったせいか、スカートのすそがめくれて太ももが剥き出しになっており。
もう少しだけ視線を落とせば、パンツが見えそうなほどきわどかったのだ。
「……っ」
思わずごくりと生唾をのんでしまう。心臓もバクバクしてきた。
そもそも陽キャ寄りである陽咲は、女子たちの平均よりもスカートが短い。だいたい膝上五センチぐらいだろうか?
おかげで少し動くだけでもスカートがはためき、色白な太ももをさらけ出すことなどしょっちゅうだ。
……パンツはさすがに見たことがないけどな。
動きが計算され尽くしてるのか、はたまた陽咲の周りだけ重力が強めなのか。どんなに激しく動いても奥にある布地はチラッとも拝めない。
穿いてるのか、それとも穿いてないのか。俺のなかではいまだに答えが出せていない難問でもある。
「うーん……♡」
うつ伏せになった陽咲がなにやら唸り声をあげたかと思うと、足をばたつかせ始めた。
海の季節にはまだ早いだろ、とツッコむべきなのだろうが、俺は口を動かすことすら忘れていた。
なぜって、動きにあわせスカートのすそがパタパタとはためいてたんだから。
太ももの面積がさらに広がり、柔らかな筋肉の波打つ様子がはっきりと見えてしまっている。
相変わらずパンツは拝めないが……すごく、いけない世界を覗いてるような気がして。俺の下腹部に熱が集まってきてしまった。
バレてしまわないようすぐさま床に置いてあるクッションに腰かけ、女友達に注意を促していく。
「ひ、陽咲っ、行儀、悪いぞ……」
「あっ、ごめーん……うちでの癖が出ちゃってたぁ~♡」
身体をひねり、すっくと身を起こした彼女は、申し訳なさそうに笑ってみせる。
寝っ転がってて疲れも吹き飛んだらしく、今度はベッドのへりに腰かける格好になった。
俺の方に足元を向ける形になり、すらりとしたふくらはぎが視界いっぱいに広がったかと思えば。
振り子のように足を動かすもんだから、スカートの前側が浮いて、奥の空間がちょこちょこ見えそうになってた。
コイツ、わざとやってるわけじゃないよな……?
疑いの眼差しを寄せるも、件の女友達は特に気にした様子もない。ポケットから取り出したスマホを眺めながら、楽しげに口を開きはじめた。
「ねぇ春風~、そろそろゴールデンウィークが近いじゃない?」
「ん、あぁ……そうだな。宿題いっぱい出されるんだろうな」
「宿題のことはいまはいいの! せっかく休みがいっぱいなんだから、どっか遊びに行こうって話!」
「遊び、遊びね……。でもお前、陽キャたちと遊ぶんだろ?」
「さすがにずっとじゃないし。春風との時間も作るに決まってるじゃん♡ 大事な友達なんだからさ♡」
足先をブンブン振りながら笑い声をあげる陽咲。激しい動きでさらにスカートがめくれ上がりそうになってたので、さすがに顔をそらした。
本音を言えば見たい。めちゃくちゃ見たい。――けど、今日の出来事が邪魔をするのだ。
脳裏に浮かぶ、陽キャ男子にパンツ見せてとお願いされて、怒りをあらわにする女友達の姿。
さすがの陽咲も悪ノリは許さない。一線を引くべきとこは引いてるのだ、と実感させられたものだ。
いくら俺にキスを許してくれてるとはいえ、パンツを見るのはきっとダメだろう。
遠慮するな、どんなことでも受け止める、なんてのは建前に決まってる。俺を持ち上げて落とすつもりに違いない。
シュレディンガーのパンツのせいで疑心暗鬼になりつつある俺に、陽咲が足先でツンツンとつついてくる。
「ねぇ、さっきから悩みすぎじゃない? もっと気楽に考えなよ」
「まぁ、うん……そう、だよな。でも俺との時間はムリに作らなくてもいいから」
「そっちじゃなくてさ、スカートのなか、気になるんでしょ?」
「――うぇっ!?」
いままさに頭を抱えてる事象を見抜かれ、素っ頓狂な声がもれてしまった。こんな反応じゃ肯定してるようなものだ。
おそるおそる顔を向ければ、陽咲はいたって真面目な顔をしながら、
「見たかったらみてもいいよ? あたしのパンツ」
スカートのすそをつまんで、持ち上げてみせるのだった。
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