4.1度目の話し合いタイム② それぞれの話/夏風と拳太
夏風が話し始めた。
「言い出しっぺの私から話すわ。私がいじめられた原因は、優秀すぎたからかしらね」
いちごが口を挟んだ。
「うわぁ、いきなり自慢? カンジわるー」
拳太がいちごに言った。
「いちごちゃん、時間がないから」
タイマーの残りは『37:55』だ。これ以上、小競り合いをしている場合じゃない。
いちごはぶすっとした表情になった。
「はいはい、わかったわよ」
夏風が再び話し始めた。
「私は有名私立中学校の受験に合格したわ。でも、入学直前に家庭の都合で進路を変更して近所の公立校に通うことになったのよ」
拳太はたずねた。
「それって、さっきユグゥラが言っていたお父さんの失踪と関係があるの?」
「ノーコメント……と言っても無駄か。否定はしないとだけ言っておくわ。いずれにしても入学した公立校ではいつも私が成績トップ。私の頭の良さに嫉妬したんでしょうね。クラスメートに教科書やノートを破かれたり、机に下品な悪戯書きをされたり、無視されたあげく陰口をたたかれたり、もう散々よ。私が受けたいじめの話はこんなところかしら」
夏風の話を聞き終えて、いちごが言った。
「たしかに、そんなイヤミな性格じゃいじめられても不思議じゃないわねー。逆にいじめっ子だったとしても驚かないけど」
どうも夏風といちごは馬が合わないというか、相性最悪らしい。
夏風の次に話し始めたのは拳太だ。
「さっきユグゥラも言っていたけど、ぼくの両親は3年前に事故で亡くなったんだ。それで、ぼくと妹の優衣は叔父さんの家で暮らしている。でも、妹が病気になって治療にお金もかかって……」
そこまで語った拳太の話をいちごが遮った。
「うわぁ、ありがちなお涙頂戴劇だねー」
拳太はちょっぴりムカっとしたが、反論はやめておいた。
全員の話をちゃんと聞くなら、これ以上つまらない言い争いをしている時間はない。
「叔父さん夫婦もそこまで裕福じゃないし、ぼくの両親の遺産もほとんどなかったし、色々肩身が狭くてさ。それはしょうがないけど叔父さんの息子……ぼくと同じ小学5年生だけど、彼がぼくのことを居候だって学校で触れ回っていじめられるようになったんだ。いじめの内容は、罵られたり、蹴られたり殴られたり、色々だよ。ほら、お腹にもに
拳太がシャツをたくし上げて見せると、いちごが観察してから言った。
「たしかにお腹にあざがあるわね。いじめられっ子だって証拠にはならないけど」
一方、昭博が言った。
「ゲームに勝ったら妹さんを助けたいって願うのかな?」
「うん。本当に妹……優衣を助けられるなら、ぼくはなんでもするよ」
ヤマトが言った。
「拳太お兄ちゃん、カッコイー。ぼく、ソンケーしちゃう」
「それほどでもないよ」
拳太はちょっとだけテレてしまった。
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