第8話
ルシウスとリリー、そして少し離れた場所で静かに歩く阿座丸の三人は、息を呑むような異世界の風景に足を止めた。
目の前に広がる滝は、言葉では表しきれないほど壮大だった。
巨大な水流が大地を揺るがす音を立てながら、上へ登っていく。
霧となって空気に溶け込むその飛沫は、やがて柔らかい光を帯びて虹を描き、幻想的な光景を生み出していた。
ルシウスは阿座丸に歩み寄り、慎重に声をかけた。「阿座丸…僕はリーダーとして仲間の命を第一に考えてた。でも、君の気持ちを考えてなかった。...僕が間違ってた、ごめん」
阿座丸は立ち止まり、冷静な表情を崩さずにルシウスを見つめる。しかし、その瞳には微かな哀愁が宿っていた。「拙者の方こそ、勝手に感情的になってしまったでござる…この命を助けてくれた者には、もう報いることすらできない。だが、今でも拙者を天から見守っているような気がするのでござる。ならば、拙者も誰かを助けることで拙者が受けたご恩に報いたいのでござる」
その言葉に、リリーも歩み寄り、微笑みを浮かべて二人を見つめた。「あたしも同じさ。あたしも大切な人を失って…だから、もう二度と後悔したくない」
3人は手を合わせて、ルシウスが号令をかける
「3人で、絶対にサンテリア彗星島を救おう!」
そして、彼らは心を一つにして再び歩き始めた。すると、滝のそばには備え付けのボートがあった。ルシウスはボートを見つめると、不思議な顔をする
「まさか...これで滝を登れってことか?」
ルシウスは不安そうな顔をする。だが、阿座丸は冷静に
「この島々を見て実感したでござろう。この島は不可能を可能にする」
ルシウスはそれもそうかと納得した。3人はボートに乗り込むと、滝に向かって進んだ。
ボートは滝壺の激しい水流に差し掛かるが、周りに不思議な光の粒が漂い始め、ボートをやわらかく包み込む。通常ならば絶対に登れないはずの滝の斜面を、ボートはまるで見えない手に導かれるように滑るように進んでいく。滝の水しぶきが輝き、光の道が現れたかのようだ。
滝を登るたびに、ボートはゆっくりと浮き上がり、力強い水流の中でも安定した動きを見せる。冷たい水しぶきが頬を打ち、風が周囲を吹き抜けるたび、浮遊感が増していく。周りの光がますます強く輝き、ボートは滑らかに流れに逆らい、ついには滝の頂へとたどり着いた。
頂上から見下ろせば、自分たちがまるで天に昇る道を登ってきたような、不思議な感覚が心を満たす。
ルシウスたちは「誕生の間」からさらに上へ進み、第二層、「記憶の間」にたどり着いた。辿り着いた先には、古びた石の扉が彼らの進路を阻むように立ちはだかっていた。その扉の表面には龍のシンボルが刻まれ、光が微かに揺らめいている。すると扉から低く響く声が聞こえた。
「訪れし者よ。この先に進むには、汝らがここで得た記憶を試される。龍神を敬う心があるのならば、我が問いに正しく答えよ」
ルシウスとリリー、そして阿坐丸は顔を見合わせ、頷いた。試練を避けては通れないと覚悟を決め、ルシウスが扉の前に立った。
「いいだろう。聞いてくれ」
声が続けて問いを放つ。
「第一の問い。この村の人々は毎年龍神祭りに供える『虹の花』について話していた。彼らが捧げる虹の花の色は何種類あるか?」
ルシウスはすぐに村での会話を思い出すが、村人と会話をしたのは一瞬で鎧のことしか喋っていない。村長もそれっぽいことを言っていた覚えはない。しかし、リリーはあっさりと答えた
「7色だよ」
扉の光が揺らめき、次の問いが放たれた。
「ま、マジかよ...なんで分かったんだ?」
するとリリーはあっさりと
「ほら、入り口に色んな色の玉をもった竜の石像があっただろ? その色の数が7色だったんだよ」
と言った
「正解だ。では、第二の問いに進もう。この村の中央には祭壇があるが、何と呼ばれていたか?」
3人は悩む。今度は阿座丸が答えさせてくれと言った。
「答えは竜の盃。拙者、酒には目がなくてな。盃という単語を聞いて覚えていたのでござる」
ルシウスとリリーは驚いて、ルシウスは
「そうなのか? だったらこの島を救ったら一杯やろう」
と嬉しそうに言った
リリーは「あんた酒弱いんだからほどほどにするんだよ。阿座丸、一杯やるときはあたしたちにあんたのこと、いっぱい聞かせてくれ」と言った。
扉は再び静かに頷いたかのように光り、さらに問いかけた。
「では、第三の問いだ。この島には世界最大の鳥が生息しているが、その鳥の名前は?」
ルシウスが一歩前に出て答えた。「コリンカジャス!」
するとリリーが「あたしが言おうとしたのに!」と不満そうな顔をした
扉の光がしばらく揺らめき、次の問いへと進んだ。
「正解だ。では、最終の問いを授けよう。この村の者たちは何故、汝らを特別な存在と見なしたか?」
ルシウスは一瞬考え込み、村長との会話を思い出した。龍神からの神託、下界からの訪問者、すべてが予言に符合していたことが彼らにとって奇跡のようだった。
「村長が言っていた神託のせいだ。彼らは、下界から来る者が島を救うという龍神様からの予言を信じている。」
すると扉はゆっくりと開き始め、その奥に広がる暗闇が徐々に光に照らされた。
「汝らの記憶と敬意は本物と認めた。ゆくがよい、龍神の導きのもとへ。」
扉が大きな音を立てて開き、奥には滝が見える。ルシウスたちは次の階層に足を進めた。だが...ルシウスたちの後ろから不穏な影が着いてきていることにルシウスたちはまだ気づいていなかった
「ろろろろ...この島の音は素晴らしいね。わっちの中でイマジネーションが湧き上がってくるよ...」
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