第6話

ルシウスとリリーが向かった先は、ガウシア王国の国境近くに位置する町、ギーツ。サンテリア彗星島への通過点として栄えてきたこの町は、ガウシアの豊かな文化と他国の影響が融合した独特の雰囲気を持っていた。


ギーツに到着した二人は、石畳の通りを歩きながら周囲を見渡した。町は活気に満ちており、広場では商人たちが色とりどりの布や香料、そして奇妙な形の装飾品を並べている。市場の喧騒と、人々の笑い声が風に乗って耳に届く。


「この町、まるで異国に来たみたいだね…」とリリーが感嘆の声を漏らす。


「ガウシアの国境に位置しているから、他国との交易も盛んだと聞いている。異なる文化が混ざり合っている場所なんだろう」とルシウスは答えながら、目を凝らして町の全体を把握しようとする。


中央広場の奥には、古びた石造りの教会が立っており、その背後にはガウシア王国とサンテリア彗星島を隔てる巨大な山脈がそびえ立っていた。町はその山脈のふもとに広がり、国境を越える者たちのための宿や商店、そして旅の情報を提供する案内所が立ち並んでいる。


リリーは周囲を見渡しながら、ふと気づいたように口を開いた。「ルシウス、あの教会の前に集まってる人たち…」


教会の前には、集団が何かの祈りを捧げていた。その中心には、賢者らしき老人が立っており、空を指さして何かを語り続けている。近づいてみると、彼の言葉が耳に届いた。


「彗星の光は我らの進むべき道を示す…サンテリアの星々を信じる者たちよ、天を見よ!」


ルシウスとリリーは教会前の集団から離れる。

「警備所へ行ってみるか。そこならサンテリア彗星島に関する情報が得られるかもしれない」


町の通りを歩くと、町の端には高い壁がそびえ、その先に国境の関所が見えてきた。


警備所は町の西端に位置し、巨大な門と頑強な石壁が並んでいた。国境を超えようとする旅人たちが並んでおり、武装した警備兵が一人一人の書類を確認していた。


ルシウスとリリーも列に並び、順番を待っている間に周囲を見渡した。多くの者が武器や荷物を携え、険しい山脈を越える準備をしている。サンテリア彗星島へ向かう者も少なくないようだ。


やがて二人の番が来た。警備兵が厳しい目でルシウスたちを見つめ、問いかける。「国境を越える目的は?」


「ガウシア王からの許可を得て、サンテリア彗星島へ向かうためだ」とルシウスは王の署名入りの書簡を取り出した。


警備兵は書簡を慎重に確認し、驚いた様子を隠しきれないようだった。「陛下の直々の許可書か…これは滅多にないことだ。すぐに通行を許可する。ただし、道中は気をつけろ。最近、国境を越えたあたりで異常気象が発生していると報告が来ている」


「異常気象?」リリーが不安げに尋ねる。


「そうだ。突然の嵐や、夜空に見えたはずの彗星が姿を消したり、奇妙なことが次々と起こっているらしい。原因はわからんが、サンテリア彗星島そのものに何か異変があるのかもしれん」


警備兵は深刻な表情で語ると、ルシウスたちに通行証を渡した。「気をつけて進むんだ。何かあればすぐに戻るんだぞ」


ルシウスとリリーは礼を言って警備所を後にした。途中、いくつもの起伏のある山道や峡谷を越え、旅は次第に険しさを増していった。空が徐々に暗くなり、星々が夜空を照らし始める中、遠くに神秘的な光が現れる。それは、天高く浮かぶサンテリア彗星島だった。


リリーがその光を見上げ、声を上げる。「あれが…サンテリア彗星島。空に浮かぶ島々…本当に綺麗…」


ルシウスもその光景に目を奪われながら、「あぁ...」と呟いた。


近づくにつれ、島々が連なり、滝が天空へと逆流するようにそびえ立つ壮大な光景が広がる。サンテリア彗星島の入口に立つと、ルシウスとリリーはその幻想的な光景に圧倒されながらも、次の冒険に期待と不安が入り混じっていた

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