第6話
アカネのいない昼休みは、凛珠にとって退屈以外の何ものでもない。と言っても、アカネと一秒でも一緒にいれる昼休みの方が珍しい。
こういう時はいつも、家庭科の先生が育てている植物たちの世話を手伝う。
アカネ達が集まる教室の場所は知っている。けれど、そこに一人で入る勇気はない。
今日はずっとヘチマの種を蒔いていた。夏休みが明ける頃には、立派なグリーンカーテンになるらしい。
「青井先生、種蒔き終わったよ。他に手伝うのある?」
「ありがとう凛珠ちゃん。ミニトマトも手伝ってもらおうと思ったけど、もう昼休み終わっちゃうね。」
先生に言われて、そんな時間になっていることに初めて気づく。授業に行く前に土だらけになった手を洗わなければいけない。
「大変。先生、またね」
手を払いながら慌てて駆け出す。英語の先生は厳しい。予習をしていないとすごく怒られる。だから英語の授業がある日は、いつも授業前に念入りにノートを見返していた。
今日の指名は誰からだろうか。当てられも大丈夫なように、心の準備をしておかないと。
手についた土を落とすのに手間取っていたら、予鈴が鳴ってしまった。英語の先生は予鈴が鳴る頃にはいつも教室に来ている。まずい。
少し遅れて教室に入れば、自分以外の生徒は全員座っていた。
「柊木さん何してたんだろーね?」
「男とヤッてたんじゃないの? 学校なのにねー。」
クスクスと笑いながら、凛珠に聞こえるか聞こえないかくらいの声で根も葉もない話を立てるクラスメイト。
自分達が言ったことが本当かどうかなど、彼らには関係ない。ただ面白いから、というだけで向けられる悪意。退屈な日々を刺激するコンテンツとして凛珠を扱うことを広めたのは、どうせ同じ中学の人間だ。
でもいい。今日は久しぶりに紫音に会えるから。「最近紫音は楽しそうだ」と陸が言っていた。何か良いことがあったのかもしれない。いっぱい話すのが楽しみだ。
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