第3話  3 広宣流布の折伏

#折伏

「旅客来りて嘆いて曰自ずと近年より近日に至り飢饉疫癘遍く天下に満ち広く地上に迸。牛馬巷にたおれ骸骨路に充てり。死を招くの輩既に大半を超え、之を悲しまざるの族―—」

(立正安国論選り)


#1

立正安国論漢文を最初から淀みなく読んでいく。

道行く人々は関心無さそうに其々の日常とともに去って行く。

此処は比較的治安が良く、人々は談笑しながら去って行く。

明日来るかもしれない自界叛逆他国侵逼を恐れもせずに。


#2

昨日、不思議な話だが、唐突に欧州の二国間紛争が停戦合意した。

同じく、第何次目かの中東戦争も停戦に合意した。

今日、安全保障理事会が開かれ、防衛省は両地域のPKOから部隊を撤収すること決定した。

千五百万法華講連合会の戦いも今年は余すところ二か月となった。

メールでは檄文が飛んでいる。

科学主義の講ではローラー作戦で電話攻勢を掛けたりしている。

営業じゃない、て言うのに。

確かにビジネスライクに割り切ると、仕事は、統計的に、進んで行く。

しかし、仕事、では無い。

慈悲で広宣流布は進んで行くのだ。

慈悲を根源に歓喜の波動が拡がっていく。

慈悲で人を救って其の人が救われた喜び。

其の歓喜と確信が事を動かしていくのだ。

其れは他人に自分の幸福の形を押し付ける事ではない。

三大秘法を教えて、教わった人が実践して自分の幸福を手に入れる事、其れを喜ぶことなのだ。其れが菩薩、地涌の菩薩の愉しみと云うものだった。


とは言え。

「あー、アポ取れない」

小さな親切は理解され易いが人を根本から救う大きな親切は理解されがたい。

怨嫉に辟易はしながらも。

「次」

携帯に指を滑らせた。



#3

「あ、西山から」

辞めとけ辞めとけ、とジェスチャーされる。

「いや。メール」

黙って女を縛っている。

女は猿轡をされて声がまともに出ない。

涙目の女を拘束していく。

「其れより。」

「ああ。」

業者にメールを打てと言う事だろう。

縛って、犯して、精神的に拘束したら、女は横浜の店に沈める運びとなっている。

垂らされたシャブで女の瞳孔が開いている。

同志の部屋から失敬して来た、「薬」を液体化したもの。

このルートは随分と簡単なルートだった。

「替われよ」

「ああ」

他五人の同志が待ちわびる中優先的に女を犯す。

吸わないはずの煙草を吸っている同志。

西山からのメールを見る。




#4

新宿。駅北ガード下。

「何処行くの」

「仕事」

「仕事って湯没?」

「……」

「その仕事ってする?」

「……」

「不特定多数?」

「違うよ」

「するんだね?」

「な」

「特定の人?」

「会員の人」

「知り合い」

「……」

「給料出てるよね」

「……」

「そう言うのなんて言うか知ってるよね」

「複数だけど特定の人」

「オプション会員とか?」

「……」

「知ってる人としかしないの」

「複数のオプション会員と知り合いと」

「うん」

「好きでやってるって言う?」

「……」

「脅迫されている?」

「されてないよ」

怯えと困惑の混じった諦めの表情だった。

失敗した。

嘘つかれると質問数増えるからな。

「仏法って知ってる?」

「知ってる」

「あ、誰かから聞いた?」

「ネットで知った」

「話早いや。唱え行こうよ。御本尊の所」

「えー」

ぐずりそうに成ったが、店休むの俺のせいにしていいから、と言ったら渋々ついて来た。




If 広宣流布 then 国立戒壇建立 、仏国実現

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