第2話 2 火星人?

#火星

火星に地下大海が発見されたのは2024年のこと。

ウェルズ以来の火星人襲来説が勃興しそうな話題だった。

バイキング以降、この年の近年は多くの火星探査機が探査任務に就いた。NASAのみならず日本のJAXA、中国の探査機も探査任務に就いた。火星に海を発見したのは米国のインサイトと言う探査機だった。


#折伏

「しかし、さ」

この友人は中々決定しない。

「何?」

「結局お前らの言う他国侵逼は起きなかった訳だろ?」

「中国が日本に攻めてくる?」

「そうそう。」

頭を抱える。一般の連中はもう誰も事の顛末を知らない。

「いや、在ったんだけどさ」

「え?」

土地取得。株式取得、労働力独占、民族浄化、日本の秘かな文化大革命。「民族」単位の国家の分裂。革命勢力による国会の独占。天皇制の永遠休止。そして今に至る旧日本の弾圧。先行の何処かの国だった自治区の例にもれず日本も復。なのに誰ももう認識していない。一部の組織の人間を除いて。

「日蓮大聖人に帰依しなければ日本は亡ぶ、読んでくれた?」

「読んだけど、古いよ」

「……既に史実書だけどな」

「じゃぁさぁ日本国政府って何?」

「中国の傀儡政府」

「大戦中のフランスのような?」

「ちょっと違うが、満州の溥儀のようなもの」

「自業自得」

「で、俺たちは未だ滅んでない日本の広宣流布に戦っているわけだ」

「亡んだんじゃないの?」

「まぁ、命脈は保ってるんだよ仏法上」

「広宣流布って言うのは、”三大秘法を皆が受持すること”だっけ?」

「そうそう。皆が一切の誹謗仏法を捨て本門戒壇の大御本尊を信じ南無妙法蓮華経と唱える事。その時国立戒壇が建てられて仏国が実現する」

「其れを手伝えと」

「日本の為に」

「嫌だな、俺。宗教に填まって人世台無しにしたくない。宗教は民衆の阿片って習ったぜ」

「共産主義め。邪見だよ、邪見」

「邪見?」

「因果の道理を無視した考えや見方の事」

「とにかく俺は嫌だね。不幸になりたくない」

「道念の無い。成仏を願えよ」

今日の折伏成果、支隊現況どうなっているだろう?



#月面(シュミ)

月面都市。都市管理電算機管制室。

「例のシュミレーション」

電算機の監視任務には結構な余裕がある。

雑談を交わしながらでも出来るのが余禄だった。

「そろそろだろ」

「ああ、マーシアン。」

「火星の連中はどう思ってんだろうな」

「俺たちと同じだろ。仕事してるだけ」

「火星人襲来は、夢物語、か」

「あれ?」

掛かってきた内線に対応する同僚。

「どうした」

「火星から。会敵したって」


#コンビニ

待っても待っても彼女は来ない。

嫌になって帰る前に、気分直しに音楽を聴こうとして携帯を手に取る。

ニュースのフィードが新着のニュースが入っていることを告げていた。

”火星に異星人。国連軍会敵か”

残骸になった火星探査機の写真がアップされていた。

追いかけていた宇宙のニュース。

とうとう来た。

他国侵逼の号鍾。

―—他方の賊。



if  広宣流布  then  国立戒壇建立、仏国実現

else

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