第弐話 一人ノ女


その女と目があえば、

数分…いや、数秒見つめあった。


そうすれば、隣で話しかけていた親友が

俺のことを心配そうに見つめて呟いた。


『おーい、大丈夫か?颯寿朗??』


その声で、女性から目を離して佐舞郎と

目を合わせて呟いた。


「まだ店に迷ってんなら、彼処にしないか??」


そう先ほどの女性のお店を指さした。

俺の言葉を聞けば、

彼は分かりやすく顔をゆがませて言った。


『まじで言ってんのか?彼処は

この遊郭で一番客が少ないうえに、

 奇妙な噂しかないところだぞ?

流石にやめとこうぜ?』



そういう親友は、俺の手を引いて

無理やり他の処に行った。



『此処にしようぜ、此処は弐番目に人気の

 御店なんだよ。』


そう隣で呟く親友の声は、

聞こえてはいるが、反応はしなかった。

俺の中にあるのは、先程の店の女性の事だけだ。



______ 




[ 素敵な武士方、来てくれて光栄どす。 ]


一人の花魁が俺たちにそう微笑めば、

隣に座る親友はさぞ、嬉しそうに答えた。


『素敵なんて照れるな~、俺らはそんなに

 すごい武士じゃないんだよ、

 只の下っ端の武士だからね。』


[ そんなことありんせんよ、あちきから見たら

  二人とも素敵どすえ。 ]



何て俺と親友に笑いかけた ___ 




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夜 明 け 迄 蘇零 @kuro_se_0115

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