第3話

 昼休み。お腹が空いたのでいつも通り小銭を握りしめて、購買へと向かおうとする。


「京子さん、どこに向かわれるのですか」


 ちょうど席を立ったタイミングで、隣に座っている美人に引き止められる。


「えと、購買だけど」


「私もお昼ご飯買いたいです。でも今日来たばっかりです」


「……あー、ついてきてよ。案内する」


「京子さん優しい……感謝します」


 誘導されるような言い草だったが、細かいことは気にしない。むしろ、好きな人が色々話しかけてくれて嬉しいまである。


 あたしは内向的で積極的に自分から話を振ることが不得意だ。運良く彼女が隣の席になって、はたまた友だちにもなったのは、最高な幸運でしかない。


「行こっか」


 廊下を歩いていると妙に居心地が悪い。それは明白で、後ろにちょこんとつく渚の存在だ。


 うざったい視線の小雨を考えないようにして、購買まで到着した。


「何を買うんですか?」


「メロンパンかな、いつも買ってるし」


「京子さん甘いもの、好きですよねー」


「そーそー……ん?」


「どうかされました?」


「……いやなんも」


 あれ? あたし渚ちゃんに好みの話したっけ?


「私も好きです。一緒ですね」


 何事もなかったかのように彼女は商品を選び始める。


 きっと話してたんだ。そう判断し、深く考えることはせず、メロンパンを買った。


「白沢さん、それ」

 

「いちごチョコロールパンです。おいしそうですよね。どこで食べましょうか」


「…屋上いこ?」


 一緒に食べるのが当たり前みたいに渚が言って、心が満たされるように嬉しかった。

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