第2話 父の跡を継いで
もう少しで大河ドラマがはじまる。今日は特番でサザエさんとちびまる子ちゃんがやらなかった。
源次は食器を洗い、コタツに入りテレビのリモコンを押した。派手な音楽と共にタイトルバックが現れた!
『源氏の誇り』
出演者の紹介をしている最中にトイレに行き、小をした。
ストーリー概要: 源義家(磯村勇斗)は、父・源頼義(筧利夫)が安倍氏との戦いで経験した失敗や成功を胸に、武士としての成長を遂げていく。頼義が大敗した黄海の戦いを乗り越え、清原氏の支援を受けて安倍氏を破った背景が描かれ、義家はその教訓を学ぶ。彼の成長と共に、当時の政治的な緊張と戦争の中での家族の絆も強調される。
天喜5年の大敗後、義家は清原武則(竜星涼)に頭を下げ、参戦を依頼する。義家は平身低頭で頼み込むが、武則の乳母・千任(内田有紀)から厳しい言葉を浴びせられ、激怒する義家の姿が描かれる。義家の心の葛藤と彼が抱える責任感がストーリーの中心となる。
さらに、康平6年に従五位下出羽守に叙任される義家は、清原氏の本拠地である出羽国での権力争いに巻き込まれ、出羽守としての任務に悩む。義家は自らの名誉と家族を守るために奮闘するが、政治的な圧力や義家に対する疑念が彼を苦しめる。
キャスト:
源義家(磯村勇斗): 父の跡を継ぎ、武士として成長していく青年。強い正義感を持つ。
源頼義(筧利夫): 義家の父。過去の戦いの教訓を義家に伝え、支える。
清原武則(竜星涼): 清原氏の当主で、義家に対して厳しい態度を取るが、心の奥には義家への期待がある。
千任(内田有紀): 清原武則の乳母。義家に対して辛辣な言葉を投げかけ、彼の成長を促す。
藤原基通(勝地涼): 物語の中で敵対する藤原氏の武士。義家との対立が緊張を生む。
陸奥守(吉川晃司): 大和源氏の源頼俊。義家の上司であり、任務に関する複雑な事情を抱える。
加賀守(野村周平): 義家の友人で、共に戦いに挑む青年。義家を支える存在として重要な役割を果たす。
謎の軍師(陣内孝則): 戦術家として義家に助言を与えるが、その正体は謎に包まれている。
このエピソードでは、源義家の成長や家族の絆、そして彼を取り巻く人々との関係が深まる様子が描かれる。また、政治的な陰謀や権力争いの中で、義家がどのように道を選ぶのかが物語の重要なテーマとなる。
『源義家』の最終回が終わり、源次はコタツの中で静かに深呼吸をした。ドラマの余韻に浸りつつ、ふと自分の現状と向き合わざるを得ない気持ちが湧き上がってきた。
義家が家族や仲間と共に困難に立ち向かい、揺るぎない信念を貫いた姿は、源次にとって眩しくもあり、重くのしかかるものでもあった。彼は今、自分が目指していた夢から遠く離れた場所にいることを改めて痛感した。周りを見渡すと、自分には支えられるべきものがないと感じたのだ。
さらに、源次の父親は警察官僚で、厳格な父の背中を小さい頃から見て育ってきた。兄は山梨県知事にまで登り詰め、地域の発展に尽力している。二人とも、地位や責任を背負い、多くの人に影響を与えている存在だ。そんな家族の中で、源次だけが仕事を失い、しばらくの間ニート生活を送っている自分が、不甲斐なく感じられた。
「俺だけが、何も成し遂げられていない…」
口には出さずとも、心の中でそう呟くと、胸の奥が重く沈んだ。家族は表向きには何も言わないが、彼のことを心配していることは感じ取れていた。何かしらの形で結果を残したい、そして家族にも自分が頑張っている姿を見せたいと思う反面、過去の失敗が心の奥にしこりとして残っている。
源次は、もう一度自分に問いかけた。「このままでいいのか?」と。義家の姿が頭の中に浮かび、彼もまた大きなプレッシャーの中で戦い抜いたのだと思うと、自分も逃げてはいけないという気持ちが少しずつ湧き上がってきた。
その夜、源次は久しぶりに机の上にライター時代のメモ帳を広げ、再びペンを取った。書きたいテーマや伝えたい思いを少しずつ書き出していくと、心の中にかつての情熱が少しずつ戻ってくるのを感じた。家族に頼るだけではなく、自分の力で道を切り開き、少しでも誇りに思ってもらえるような生き方をしたい。そう思いながら、源次はペンを走らせた。
翌朝、彼は意を決して再就職活動を始めることにした。
その週の土曜日、源次は再び次の面接に向かうため、少し早めに家を出て、北杜駅へと足を運んだ。スーツ姿で駅前を歩いていると、不意に後ろから懐かしい声が響いた。
「おい、室井! まさかお前じゃないか?」
振り返ると、そこには旧友の田辺が立っていた。学生時代からの友人で、共に夢を語り合った仲だった。田辺は現在、地元の不動産会社で働いていると聞いていたが、久々の再会に源次は驚きと喜びで顔をほころばせた。
「田辺か! こんなところで会うなんて…元気にしてたか?」
「おかげさまでな。でもお前こそ、どうしたんだ? ライターの仕事、続けてると思ってたけど…」
田辺の問いかけに、源次は少しばかり苦笑いを浮かべた。ライターの仕事に情熱を燃やし、あれほど夢中だった自分が、いまは面接に通う身となっている。ふと過去の自分が遠く感じられたが、同時にまた始めるためにここにいる自分を誇らしくも思えた。
「実は少し前に会社辞めてさ…色々あって、いまは再就職活動中なんだ。昨日、ようやくまた頑張ってみようって思えたところなんだよ」
「そうか、大変だったんだな。でも、お前らしいよな、諦めずにまたやり直すなんて」
田辺は優しく微笑んだ後、ふと何かを思い出したかのように、手をポンと打った。「そうだ、ちょっとした話があるんだけどさ。うちの会社、実はライターを探してるんだよ。物件の紹介記事とか、地域の魅力を伝えるコラムを書く人材が必要でさ。お前、興味あるか?」
源次はその話に驚きつつも、心の奥で小さな期待が芽生えた。田辺の会社でライターとして働けるかもしれないという考えは、これまでとは違う可能性の扉を感じさせた。少し考えた後、彼は頷いた。
「…俺にできるかわからないけど、やってみたい。人の心に届く文章を書くっていうのは、どんな形でも変わらないからな」
田辺は笑顔でうなずき、源次の肩を叩いた。「そうだ、それでこそ室井源次だ! じゃあ、詳しい話は後で連絡するから、期待して待っててくれよ!」
二人は再会を喜び合い、互いの近況を少し話した後、それぞれの道へと歩み出した。源次は再び未来への希望を抱きながら、次の一歩を踏み出す準備を整えた。
逃亡者の正体は、源義仲(木曽義仲)その人であった。彼は1184年に討たれたはずだったが、戦いの最中、目を閉じた瞬間に突如として時の流れが乱れ、目を開けたときには全く異なる時代に立っていた。そこは見知らぬ装置と高層建築がそびえる未来の日本だった。だが、彼に安息の時は訪れなかった。鎌倉の世から遠く離れたこの時代でも、彼の命を狙う追っ手の気配が常に付きまとっていたからである。
行くあてもない彼は、都市の喧騒を避け、海を渡り、隠れるようにして辿り着いた先が「鬼哭島」であった。この島に足を踏み入れた義仲は、荒廃した島の不気味な雰囲気に異様な感覚を抱く。長い旅路の果てに少しの安らぎを求めていた彼だが、島に漂う冷たさと重苦しい気配にその願いは打ち砕かれた。
義仲は夜になると、どこかから現れる亡霊のような影に苦しめられるようになった。それは彼の過去に仕えた武士たちや、かつて命を奪われた者たちの怨霊のごとき姿で、無言で彼を見つめ、時には過去の戦場の光景を幻として見せることもあった。その幻の中で彼は何度も平家との戦を繰り返し、自らの敗北の瞬間を再体験する。そして、薄れゆく意識の中で、彼はある異変に気づく。
それは、島の神社に隠された古文書であった。古びた巻物には、鎌倉時代に書かれたかのような文字が並び、「義仲の魂は再び現世に顕現し、時の隔たりを越え、かつての無念を晴らす」と記されていた。巻物の内容に息を飲む義仲は、自らがなぜこの時代に飛ばされたのか、その理由が徐々に見えてくる。
やがて彼は、この島が鎌倉時代の終わりから封印されてきた場所であり、古来から数多くの魂がここに引き寄せられてきたことを知る。彼の魂もまた、過去に縛られ、無念を晴らすためにこの場所へと導かれたのだ。義仲は封印を解き、亡霊たちの無念を晴らすことで、ようやく自らの存在意義を取り戻すことができると理解した。
そして、義仲は古の神社で剣を手にし、再び戦いの決意を固める。彼の剣は今、鬼哭島に眠る怨霊たちの魂をも救うためのものとなった。鎌倉の世からの逃亡者として、そして未来へと繋ぐ戦士として、義仲は「鬼哭島」の謎に挑み、封印を解くべく動き出す。
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