こんな大河ドラマが見たい!『源氏の誇り』

鷹山トシキ

第1話 義家の誕生

大河ドラマ「源義家」


ストーリー概要: 平安時代の後期、源氏と平家の権力争いが激化する中、源義家(磯村勇斗)は、彼の父である源義光(筧利夫)のもとに生まれる。幼少期から剣術に秀で、将来を期待される義家だが、家族や親戚の間には暗い陰謀が渦巻いていた。義家は、平家との戦いの始まりを予感しながら、成長していく。第1話では、彼の出生や家族の背景、平安時代の文化が描かれ、後の英雄としての運命が示唆される。


キャスト:


源義家(磯村勇斗): 主人公で、源氏の若き武士。正義感が強く、剣術に優れる。


源義光(筧利夫): 義家の父。源氏の名門の武士で、家族を守るために戦う姿勢を持つ。


源雪(常盤貴子): 義家の母で、彼を支える温かい存在。家族の絆を大切にする。


源義平(岡田准一): 義家の兄で、彼にとってのライバル。義家とは異なる考えを持ち、対立することもある。


源義国(知念侑李): 義家の幼馴染で、共に成長する。義家を支え、時に彼の策略を助ける。


藤原頼通(木梨憲武): 平安時代の権力者で、源氏と平家の争いを利用しようとする陰謀家。


平清盛(ケンドーコバヤシ): 平家の若き武士で、義家の宿敵。彼との対立が物語のキーとなる。



 2027年1月、寒さが一層厳しくなる中、源次は暖かいコタツに入って大河ドラマ『源義家』を見ていた。夜の静かな部屋で、映し出される映像に引き込まれるように、彼の視線はテレビに釘付けだった。


 ドラマの中で、源義家が数々の戦を通じて力を増し、家族や仲間と共に生き抜く姿が描かれていた。義家の信念や覚悟に共感し、源次は自分が今まで体験してきた苦労や戦いを思い出していた。彼もまた、人生で幾度も困難に立ち向かい、多くの決断を迫られてきたからだ。


 あるシーンで、義家が戦場で友を失い、その痛みに苦しむ姿が映し出された。その表情に涙を浮かべる義家を見て、源次も目頭が熱くなった。彼は声に出さずに呟いた。「義家も、人間なんだな……」と。


 源次にとって、義家の物語は単なる時代劇ではなく、何か心に響くものがあった。彼自身、家族を守るために苦しい選択をした経験があり、その度に孤独と戦ってきたのだ。義家の姿に、自分の信念を貫く勇気を感じ、源次は静かに拳を握りしめた。


 テレビ画面の中で、義家が一歩ずつ歩んでいく姿を見つめながら、源次は決意を新たにした。「俺も、もう一度立ち上がらなきゃならない。義家がそうしたように…」


 コタツの暖かさに包まれたまま、源次は心の中で再び熱い炎が灯るのを感じていた。


 源次は『源義家』のドラマを見終わると、しばらくその余韻に浸りながら、ぼんやりと天井を見つめていた。義家の信念と覚悟に触れ、自分もまた挑戦を諦めてしまっていたことに気づかされた。源次はかつて、ライターとして人々に響く文章を書きたいと夢を抱き、出版社で働いていた。しかし、現実は厳しかった。上司からの理不尽なパワハラに耐えかねて、心が折れ、退職を余儀なくされたのだ。


 退職後、源次は家に引きこもるようになり、夢からも現実からも逃げる日々が続いた。「俺なんかには無理だったんだ」と、自分を責めることで、自分を守っていた。気づけば数ヶ月が経ち、ニート生活が当たり前になっていた。


 しかし、今日の『源義家』が彼の心に火をつけた。「義家があれだけの苦境に立ち向かったのに、俺がこのままでいいはずがない…」自分にもまだ、やり直せる可能性があるのではないかと感じ始めたのだ。


 源次はそっと立ち上がり、小さなノートを手に取った。それはライター時代に使っていたメモ帳で、彼のアイデアや書きたいテーマが走り書きされていた。埃をかぶったそのノートを見つめ、懐かしさと同時に少しの痛みを感じた。夢を抱いていた頃の自分を思い出し、「もう一度チャレンジしてみよう」と心に誓った。


 翌朝、源次は久しぶりに早起きし、スーツを取り出した。少し皺が寄っているそれを眺めながら、彼はアイロンをかけ直し、髪を整えた。面接を受けるための履歴書も用意したが、手が震えているのに気づき、思わず深呼吸した。「怖がるな、俺ならできる」と自分に言い聞かせる。義家が困難を乗り越えたように、自分も恐れを振り払わなければならないと思ったのだ。


 その日、源次は数社の編集プロダクションに面接を申し込んだ。久しぶりの就職活動で緊張していたが、面接で「なぜライターになりたいのか」と問われたとき、自然と胸の奥から言葉が溢れ出た。「人の心に残る文章を書きたいんです。読んだ人が勇気を持てるような、そんな仕事がしたいんです」と。


 面接官の表情が少し和らいだのを見て、源次は確かな手ごたえを感じた。そして、すべての面接が終わった後、彼は心地よい疲れを感じつつも、自分が再び一歩を踏み出せたことに深い満足感を覚えていた。


 帰り道、冷たい風が頬をかすめたが、源次の胸の中には、かつて失っていた情熱が再び燃え始めているのを感じていた。


 2027年1月、逃亡者は「鬼哭島きこくとう」にたどり着く。島は日本列島の果てにある、人々に忘れられた孤島で、かつて忌まわしい歴史を秘めていると噂されている。常に薄暗い霧が立ち込め、風が吹くたびに低く響く音が島全体にこだまするため、「鬼の泣き声が聞こえる島」とも恐れられている。


 逃亡者は、命の危機から逃れるためにこの島に身を潜めることを選んだが、島には何か異様な気配が漂っていることにすぐに気付く。古びた神社や放置された建物がところどころに点在し、長い年月の間に朽ち果てた痕跡がそのまま残されている。しかし、誰かの気配を感じることがある。影のように現れ消える姿や、無言でこちらを見つめる目。その正体はわからないが、島の住人とも言える者たちの存在が、次第に彼を追い詰めていく。


 逃亡者が夜に眠ろうとすると、耳元で囁く声や、足音が近づく音が聞こえてくる。島に隠された秘密、封印された過去の記憶に、彼の逃亡劇はやがて巻き込まれていく。






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