初めての集会 2
さて、こんな具合でメンバーも揃い、先ずは芸名を付けることから始まって、町内会館を練習場として毎月一回の稽古がスタート致しました。この集まりでは皆真剣に練習をしてさぞ上達したことであろう、と思いきや、最初の勢いは即座に吹っ飛んでしまって、何のことはないただの飲み会と相成って、無駄に数年が過ぎ去って行きました。
その間に記念すべき事と言ったら「一周年記念の会」というものを盛大に開いたということもありましたが、それはまた後ほどに詳しく聞いて頂くことに致しましょう。
落語研究会などと一応は研究という、偉い名前に皆は酔いしれながら、呑気に平和に過ごしておりましたが、バブル期が過ぎるとそろそろ、皆の仕事にも陰りが見えるようになって参りました。勿論そのままの好景気を維持して、全く不況知らずの人もいましたし、鬼頭さんのように何の不自由もなく、暮らしていける人もいましたけれど、やはり皆には何かしらの影響はあったようでありました。
しかしどんなに不況の嵐が吹き荒れようとも、この東谷落語研究会の中はオアシスのようなもので、いつもいつも下らない駄洒落や、ちょっぴり下品な話題で皆笑いころげておりました。お互いに励ましあいながら、いつか景気が好転したらきっと金持ちになるぞ、と師匠のいつもの口癖に
「どうしてここまでプラス思考になれるのだろうな」と笑いながらも、皆も成るように成るさと笑い飛ばす術を得て来ておりました。
平凡な飲み会と化して数年が過ぎて行ったその間には、結構楽しい出来事もありましたよ。その中でも私が何よりも先に皆様にお話したい事は、「金ちゃんが入会したこと」なのでありますわ。
金ちゃんよ。ああ金ちゃん! 彼の登場がきっとこの会に、もっともっと明るく楽しい彩りを加えてくれることでありましょう。
何しろふてぶてしく強烈な個性のおじさん達の中に、今たっても湯から上がったばかりと思われるような、すっきりとしたハンサムな青年が加わったのでありますから、会も急に若返ったようでありました。
会が発足した頃の皆の年齢はといえば、馬さんを初め佐川さん、広原さん、榎木さんらは五十歳前後。そして年配の鬼頭さんは六十代だったのでありますから、一番若いと思った弦巻さんよりもまだ若い、三十代の金ちゃんはそれはもう、若々しさでピカピカと輝いておりました。
若き青年金ちゃんの登場で、どんなに会が輝き賑やかになったのか、はたまたそれ程のこともなく、相変わらずの会にちょいと毛が生えた程度なものなのか、それはどうかは分かりませんが如何なものでございましょう。その様子をちょいとまあ聞いて下さいませ。
では金ちゃん、ど~ぞっ!
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