　前に二人の議員さんをご紹介しましたが、ついでにここでもう一人の議員さんも紹介させていただきます。我が東谷落語研究会は、どういう訳か議員さんに縁があるようでして。

地元のある大きな会社の跡取りさんである彼には芸名がありません。それでは公平を欠くぞ！日本国憲法第何条とやらに、違反するものでありましょうぞ、と我らの仲間達でしたら絶対に、大騒ぎされそうですがどうだったでしょうか。

　いやいや、それにはちと訳がありましてね、彼は何度か会には顔を出したものの、温厚なこの議員さん候補は出席する度に、皆の酒の肴にされてばかりでありました。そのかまわれようといったら大変なもので、御曹司に対する皆のやっかみからか、と妬ましい見方をしてしまうほどでありました。

その彼、ある時落語を発表することになっておりましたが、交通事故を起こして来られなくなりました。と言っても大した事故に非ずで、ちょっとこすった程度のもので皆はほっと安堵致しました。すると大事ないことが分かるとすぐに、皆はいつもの調子でからかうのでした。

「なんだよ、落語の発表から逃げたな。汚ねぇぞ、肝っ玉ちっちぇ～」

　しかし来られない旨を知らせにみえた奥様は、こんな彼らの声を聞いても堂々たるものでありまして、こんな罵声に似たおちょくりにも、平気な顔でニコニコ笑っておられます。でもそれが彼女の運のつきとなりまして、彼女はその時から彼の代わりに会に出席するようになり、次第に身代わり会員から正会員へとなっていったのでありました。皆の言い分ったらありません、「忠雄よりもかあちゃんの方がいいから、あいつはもう来なくていいよ」ってんですから、酷いもんですよアァタ。

　でもね、実際に彼女は可愛いんですわ、これが、マジで。榎木さんでなくとも皆デレッとしちゃいます。それでちょっぴり悔しがっている私などはほったらかしで、皆で真剣に芸名を考えてやっているではありませんか。次から次へと沢山出ましたよ。ええ？覚えてなんかいませんよ、もう。

　だって芸名を美しい、美人、可愛い、ステキ等とそんなことに関するものばかりで考えてるんですからね。この会の仲間達はみな職業に因んだものっていってるじゃありませんか。なのにねえ～　結果？はい、「こ・ま・ち」だそうですよ。「華ノ家こまち」に決まったそうですが・・そうですかぁ、それでいいんですか、なんて文句を言いたい私ですけどね。ひがむなひがむな、と自身に言い聞かせている自信のない嫌味な私なのでありました。

　勿論、この可愛い奥さまの応援のお陰もありましたでしょう。この彼も晴れて区議会議員さんになりましたよ。この方だっていずれは大臣になるやも知れませんからね、今から大きな声で言っておきましょう、「奥さんすご～く綺麗ですねぇ。頑張って下さいねぇ」。

　この会には政治も私情も入れてけっこうけっこうこけこっこう、と私も鳴くことにしようかな。