第4話 俺の正体が、、、
校門を出て、俺たちはまず商店街へと向かった。
「あ、あのぉ……私が前だと道、分からないんですけど……」
し、しまった……人が多くて怖いから隠れてしまった。
「ご、ごめん。人が多いところがに、苦手で……」
「じゃあ、あそこの公園で一休みしませんか?」
「は、はい」
そう言われ、俺たちは公園に行き、ブランコに座った。
しばらく何も話さず、とても気まずい雰囲気になった。
(何か話さなければ。好きな食べ物とか……)
「く、倉竹さん!」
「ふぇいッ?!」
「さっき見えちゃったんですけど、ツイッチャーでクラッシュさんの公式アカウント見てましたよね……?」
げ、もしかして見られてしまったのか?とりあえず、なんとかしてやりすごそう。
「あ、はい、見てましたけど……?」
「倉竹さんも、クラッシュさんのこと好きなんですか?」
(なんだ。八代さんは俺がクラッシュのアカウントを見ていたと勘違いしてくれてい るのか。良かった良かった。)
「えーっと、まあ、はい、そうですね」
「……もしかして、倉竹さんがクラッシュさんだったりします……?」
(え?やっぱりバレてた?? マズい。理沙や陽輪以外に正体が知られるのは嫌だ。 ここは俺が純粋なファンであると押し通そう。)
「いやーそんなわけないじゃないですかー。ただのファンですよぉ。あははははー」
「いやでも、投稿の画面開いてたような……」
「いや!!!リツイートしてただけですよ!?!?!?」
「いやでも、3月ぐらいの配信でもうすぐで高校二年生だー!的なこと言ってた気が……」
(クッ、こんなにヒントをばら撒いていた自分が馬鹿だった。と、とりあえず話を逸 らすしかない。)
「えーっと……あ、そういえば、昨日の配信に現れた赤スパさん、とんでもなかったですよねー」
「それ実は私なんです」
(よしよし、これで話を逸らせ……え?今、なんて?赤スパさんが、八代さん……?そんな馬鹿な。こんな真面目そうな子がそんなことするはずない。)
疑うように俺は八代さんを凝視した。
「つい愛が爆発してしまって……てへ」
(てへ、じゃねえよ!お前のせいで俺、めちゃくちゃ疲れたんだからなッ!!と怒りをぶつけたい気持ちで山々だが、そんなことしたら正体がバレてしまう。ここはあくまでも視聴者視点で返答しよう。)
「ふーん。そうねんですねー。へー。で、でもクラッシュさん、結構困ってた感じするので、これからはやめた方がいいんじゃないんですかね……?」
(正体をバラさず、やんわりと注意する。我ながら完璧だ。)
「あ、はい。そうですね」
(怖! なんか怖!大丈夫、 落ち着けー、自分。
これ以上この話をしたら絶対にバレるな。
あんまりやりたくないけど、街案内をするか。)
「じゃ、じゃあそろそろ行こうか」
「はい!」
(なんかにこにこしてる。普通に怖いんだけど。ま、大丈夫か。)
その後は、特に問題なく、町案内を終えた。良かった。
***
「そ、それじゃあ、また明日……」
「はい!また学校で」
そう言うと八代さんは自分の家に帰っていた。
そう、自分の「家」に。
何が言いたいかというと、俺の住んでいるところは高級住宅街なのだが、
俺のアパートの隣に、城が建つのか、というくらい広い空き地があった。
よく近所の子供達が遊んでいたのだが、最近買われたらしく、工事中だった。
俺はてっきり高級団地か何かができるのだと思っていた。
ここまで言ったらなんとなく分かるだろう。
そう、その広すぎる空き地には絵に描いたような豪邸ができたのだ。
八代さんの。
外見は西洋風のお屋敷で、庭は一般的な家がいくつか建てられるくらい広く、
噴水のある池付きだ。身なりやスピーチの内容から、金持ちではあると感じていたが、
まさかここまでとは……
というか、今までこんなすごい建築物に気づけなかった自分がどうかしている。
まあこんなものを見せられると、150000円を持っていることが腑に落ちる。
にしても今日も疲れたな……帰って寝よう。
俺は連日の疲労で爆睡して、翌日ちゃんと寝坊した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます