第2話 なにこの展開?ラブコメかよっ!

「……もう朝か。」


昨日のことを考えていたらいつの間にか時間が過ぎていって、

外は明るくなっていた。今日は火曜日、ここから、普通の学校生活が始まる。

めんどくせー。昨日疲れすぎて全然頭働かないって……

俺は昨日ぶりの制服に着替えて、学校の用意をして、学校へと足を運んだ。

俺はいつも15分くらい歩いて登校している。その途中で合流して一緒に登校する奴がいる。


(お、今日は早いな。)


俺はそいつに駆け寄った。ミルクティー色の髪の毛に、少しはねている前髪。がっしりとした体格から、普段鍛えていることはすぐに分かる。

彼は、俺の唯一の男友達である、佐江川陽輪(さえかわようすけ)だ。そしてなんとこいつは陽キャなのである!


「おはよ。陽輪。」


「おはよ! 倉竹!ん? なんか今日気分悪そうだな。なんかあったか?」


「朝からうるせえよ……いや、聞いてくれよ。それがさ……」


陽輪はいつも、俺の調子がちょっとでも違かったら、こうやってすぐに察知し、話を聞いてくれる。まぶしすぎて、まだちょっと苦手だけど、まあ意外といい奴なのだ。

ちなみに、こいつも俺が配信者だと知っている。というか知っているというより、バレたという方が正しいのだが……


「いやぁ、そんなことがあったのかー。まぁいいんじゃない。お前はお金をもらえて収益爆上がり、そいつはお前に愛の告白ができてテンション爆上がり。お互いWIN-WINじゃね?」


「……お前、頭の中お花畑かよ。」


「ははは、ありがと!そこまで俺いいこと言ってないけどな。」


「褒めてないぞー」


「てかさ、今のお前と配信してる時のお前ってまじで性格とかテンションとか違うよなー。逆にすごいわ。尊敬。」


「陽キャは陰キャの真似はできないけど、陰キャは陽キャの真似できんだよ。俺をなめんな。」


「何そのドヤ顔。ちょっと俺の怒りゲージが上がったなぁ~!?ってかさー」


などといった他愛のない会話をこいつとするのは、結構楽しい。

学校に行く楽しみの1つだったりする。

というか、陰キャの俺にこんな陽キャ友達がいていいのだろうか。

これだけで俺の一生分の運気を使い果たしている気がするのだが。

 そんなこんなで学校に着き、陽輪と別れ、俺は自分のクラスの席に着いた。

ちなみに俺の席は、1番後ろの左端、ザ・ボッチが座るところといった場所だ。俺の存在はそもそも薄いが、この席のおかげで、背景と同化できるくらい薄くなれる。だから先生にも当てられにくい。つまり、俺にとってここは特等席だ。

そんなことを考えながら、ぼーっとしているうちに先生が入ってきて、朝のホームルームが

始まった。


「えー、今日はみんなに嬉しい報告がある。なんと、転校生がうちのクラスに来るぞー」


ドッとクラスが騒めく。


「え、まじ?」


「男子かな? 女子かな?」


「頼む、美女であってくれー!」


(ほー、転校生ね……まあ俺とは縁がないに決まってる。

 期待は微塵もしてねぇ。する余地もねぇ。)


そんなことを考えていると、みんなの視線が先生に向き始めた。


「じゃあ、入っていいぞー」


先生がそういうとガラガラとドアを開ける音と共に、一人の少女が入ってきた。

白髪のロング。比較的小さい身長に、萌え袖がよく似合う。


(なんだ、ただの美少女か。やっぱり俺と関わることなんてないだろうな。

 良かった。)


「今日からうちのクラスに入る、八代那雪(やしろなゆき)だ。自己紹介してくれ」


「すぅ……こんにちクラッシャー!!!」


教室が静まり返るのと同時に、俺は思考の海につかる。

(……え?それ、俺の配信の時の挨拶じゃん。

え、俺がクラッシュだと知って、わざとやってる? もしかして、身バレした?

ヤバい、どうしよう……はっ!そうだ、俺は登録者数100万人越えの人気配信者だ。ファンの数人くらい、この学校にいるだろう。

でもこんな美少女までもが見てるのか……なんか嬉しいな。)


ちょっとした海水浴を終えると、今度は教室が笑いの渦に包まれる。


「あははは!それって、なんだっけ?あ、クラッシュの挨拶じゃん!センスあるwww」


真っ先に口を開いたのは、

金髪が目立つ一軍女子の鍬本渚(くわもとなぎさ)さんだ。

なんだが悪いうわさがあるとかないとか。すると周りももっと笑い始めた。

(ひぇー。陽キャ女子、怖ッ!)

すると、


「はいはい、そこまで。じゃあ自己紹介の続きをしてくれ。」

と先生が言った。


「す、す、すいません。私は八代那雪って言います。ち、父親の仕事の関係で、引っ越してきました。クラッシュさんの配信をよく見てます!可愛いものが大好きです!よろしくお願いします!」


と言って頭を下げると、生徒全員から暖かい拍手が送られた。

(この美少女、陰のオーラを感じる……)

緊張しているだけかも知れないが、どこか俺と似た気配がする。まあそれでもどうせ、鍬本さんあたりの派閥に吸収されるんだろう。

(こんな俺と美少女が関われるってか。ははは。)


「じゃあ、席は倉竹の隣な」


え?今なんて?俺の、隣?美少女が?俺の.....?なにこの展開、ラブコメかよ!?


「あ、八代那雪です。よ、よろしくお願いします」


「え、あ、え、え、あ、」


(くそぉ。理沙と陽輪としか話したことねぇから、

 初対面の女子との会話なんて俺には難易度高すぎるって!)

 

緊急事態に戸惑っていると、


「あ、は、ははは……」


と若干引かれ気味に笑われ、八代さんは他の人と自己紹介を始めてしまった。


(やばい、恥ずかしい。ここからラブコメみたいにイチャイチャラブラブするのかもと、淡い期待を寄せていた俺が馬鹿だった。でもまぁこれでこの美少女と関わることなんてなくなっただろう。)


友達とか知り合いが多いなんて、ろくなもんじゃねぇ。知らんけど。すると八代さんにこっちを睨まれた気がする。うん。マジで女子は怖い。


***


(隣の人の声、クラッシュさんに似てる……?)

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